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「あれんじ」 2010年9月4日号

【専門医に聞く 元気!の処方箋】
有酸素運動 + 無理しない“筋トレ”で… 太りにくい体になる。

 最近、“夏やせ”ならぬ“夏太り”が増えているとか。冷房の効いた部屋で過ごし、運動量が減る上に、ビールや冷たいものがおいしくて…となれば、「さもありなん」です。暑さも一段落したら、少し体を動かしませんか? 
 今回は、脂肪燃焼の仕組みや、女性や中高齢者でもチャレンジできて、効果が上がる筋トレのポイントなどを紹介。単なるダイエットではなく、“太りにくい”体になる処方箋をお届けします。

体脂肪が減るだけではダメ? 「食事制限+有酸素運動」の落とし穴

 ウオーキングやジョギングなど、気軽にできてダイエットに効果的といわれる有酸素運動。その特徴は、糖と脂肪の両方がエネルギー源になることです。運動を始めてすぐは糖がエネルギー源として使われます。運動を続けていると糖の消費が少しずつ下がり、徐々に脂肪の燃焼が増えていきます。例えばウオーキングなら、20〜25分経過したところでその割合が半々になり、それ以上続けると、その時間に比例して脂肪の燃焼が増えていくのです。このように「脂肪を燃焼させるのは有酸素運動だけ」ということで、大きなブームになり、定着したといえます。
 しかし、かなり長い時間続けなければ多くの脂肪は燃焼しませんし、しかもそれを長期間継続して初めて、“太りにくい”体になっていくと考えられます。忙しい現代人にはなかなか難しいことかもしれません。また、減量しようという人は食事制限と有酸素運動を組み合わせることが多いのですが、そうすると体脂肪は減るものの、筋肉量も減少してしまうことが分かってきたそうです。筋肉量と安静時代謝量(※1)は比例するので、筋肉量が減れば安静時代謝量が下がり、安静時代謝量が下がれば日常生活で消費されるエネルギー量が下がってしまいます。
 そこで、「もう少し効率的な方法はないかと考えられたのが、有酸素運動にレジスタンスエクササイズ(トレーニング)をプラスすること」と、井福裕俊教授。「レジスタンスエクササイズ?」。聞き慣れない言葉の意味を聞くと、「レジスタンスは“抵抗”という意味。つまりは筋肉に抵抗、負荷を加えるトレーニングで、これまでウエートトレーニングとか筋力トレーニングと呼ばれているもの」とのこと。「レジスタンスエクササイズをすることで筋肉量の減少を防ぎ、できれば増やすことで、太りにくい体づくりができる」のだそうです。


【※1】 安静時代謝量
 安静にしているときに消費されるエネルギー量。生命維持のための最低限のエネルギー消費量である基礎代謝量に、体温維持や姿勢維持に必要なエネルギー消費量を加えたもの。安静時代謝量が上昇すると、運動時以外でもエネルギー消費量が増えるため、やせやすく太りにくい体になる。


筋肉は、脂肪を燃焼させる工場!? 筋持久力をつけて、元気で若々しく

 「骨格筋(筋肉)は、全身の組織器官の中で脂肪をダイレクトに燃焼させることができる、最大の“脂肪燃焼工場”です。この工場をしっかり大きくすることで、有酸素運動との相乗効果が図れると思います」と井福教授は話します。
 また、中・高齢者だけでなく、最近は若い女性にも筋肉量が少なく筋力が弱い人が多いそうです。筋肉がきちんと発達していないと、正しい姿勢を保てず、ひざや腰を痛めたりします。若々しく、日常生活を快適に過ごすためにも、筋肉に刺激を与え、筋力アップを図ることは、とても大事。それも、少ない力を長い時間発揮する「筋持久力」をつけることが重要だそうです。
 そこで、最近注目されている、ゆっくり動くトレーニング法を教えてもらいました。以下にその利点、欠点を記しますので、注意して行いましょう。
【利点】
◎低負荷で、ゆっくり動くため、確実な動きがしっかりできる
◎低負荷のため、持久型の筋線維が鍛えられ、脂肪が燃えやすい
◎ゆっくり動くことで、幅広い関節角度での筋力が鍛えられる
◎反動をつけないので、筋肉を痛める危険性が少ない

【欠点】
×血圧が上がりやすい
※血圧上昇を予防するためにも、息まないことが最も重要です。必ず、力を入れる時に息を吐き、戻すときに息を吸うようにします。


やってみましょう! ゆっくりトレーニング

 合志市教育委員会生涯学習課スポーツ振興班のヴィーブルトレーニングルームインストラクターで、健康運動指導士の川本裕和さんの指導のもと、代表的な運動を紹介します。すべての運動は、一つの動きを3〜5秒かけて、トータルで50秒くらいになるよう5〜8回繰り返しますが、運動をしなれていない人や初めてする場合は、3秒で動き3秒で戻すセットを5回繰り返す(トータル30秒)くらいが無理がないかもしれません。呼吸を止めないように注意してください。


●スクワット【5〜8回】

…大腿四頭筋ほか下半身を鍛えます
@ 足は肩幅に、つま先をやや外に向け立つ。腕は好きなポジションでOK。3〜5秒かけてゆっくりひざを曲げる(息を吸いながら)。ひざはつま先の方向に向けつま先より出ないように、また背中が丸くならないよう注意する。
A 1の姿勢から3〜5秒かけてゆっくり足を伸ばす(息を吐きながら)。伸ばしきらないように注意する。


●腹筋 【5〜8回(無理をしない程度に)】

@ 仰向けになり、ひざを立てる。少し肩と頭を浮かせた状態(スタートポジション)をつくる。
A 1から、息を吐きながら3〜5秒かけて上体を起こした後、息を吸いながら3〜5秒かけて1のスタートポジションに戻す。

※最初は上体を起こす角度も時間も回数も無理をしないように。


●アームカール 【前後各5〜8回】

前…上腕二頭筋を鍛えます
@→A 1キロ程度のダンベルなどで負荷をかけ、3〜5秒かけてゆっくりひじを曲げる(息を吐きながら)。

A→@ 息を吸いながら、ひじを伸ばしきらない元のポジションに戻す


後…上腕三頭筋を鍛えます 
@→A1キロ程度のダンベルなどで負荷をかけ、3〜5秒かけてゆっくりひじを伸ばす(息を吐きながら)。この時、ひじが伸びきらないようにする。
A→@息を吸いながら、ひじを曲げ元のポジションに戻す。ひじの位置は変えない。


●介護予防にはコレ【朝・昼・晩に10回ずつ】

休憩時間に、寝る前に…など、気軽にできる運動です。どちらも腹圧を意識して行うと、より効果的です。


今回教えてくださったのは…
熊本大学教育学部
(生涯スポーツ福祉)
井福 裕俊 教授
博士(医学)、
日本運動生理学会理事、
日本体力医学会評議員、
日本生理学会評議員