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【四季の風】第37回 お玉杓子(たまじゃくし)
腮とは、「あご」や「えら」のこと。つまり共食(ともぐい)もするらしいし、何よりゼリーの紐状の「蝌蚪(かと)の紐」も気持ちの良いものではない。 しかし俳句では、この蛙の子つまり蝌蚪(かえるご)のことを「蝌蚪」と呼んで、よく詠んできた。俳人は、こんな少し不思議な世界に創作意欲を刺激されるらしい。以下、私の好きな三大作品。 天日のうつりて暗し蝌蚪の水 高浜虚子 川底に蝌蚪の大国ありにけり 村上鬼城 蝌蚪乱れ一大交響楽おこる 野見山朱鳥 私も時々、この蝌蚪に挑戦してきた。 水よりも無心にありぬ蝌蚪の紐 岩岡中正 昨年の熊本地震。でもそれにもめげず、お玉杓子たちは元気に育った。つくづく、いのちとは頼もしいものだ。 地震(ない)続き蝌蚪に手が生え足が生え 山下しげ人