【元気!の処方箋】
20代から知っておきたい 高齢妊娠・出産の問題点
社会や、個人のライフスタイルの変化などから「晩婚化」「晩産化」が進んでいます。 第1子出生時の母親の平均年齢が上昇傾向にあるなか、高齢妊娠・出産の問題点を知っておくのは大切なことです。 今回は、なぜ高齢では妊娠しにくくなるのか、また高齢での妊娠・出産においてどんなリスクがあるのかなどをお伝えします。 |
【はじめに】 |
日本はイギリスと並んで、世界でも1、2を争う高齢出産の国です。高齢妊娠とは35歳以上の妊娠出産のことで、40歳以上の場合を超高齢妊娠ということもあります。 |
【女性の加齢と妊孕性(にんようせい=妊娠する能力)】 |
卵子は胎児期に作られ、二度と新たに作られない |
【図1】加齢に伴う卵細胞数の変化
高齢妊娠、出産をしようとするときの最大の問題点は、そもそも妊娠が難しい、妊娠する能力(妊孕性)が低いということです。 |
【解説】染色体の一部が偏った受精卵が生じるのは… |
私たちの体の形や機能を作り出している分子はタンパク質です。タンパク質には多くの種類があって、それぞれがそのための遺伝子から作られます。タンパク質と遺伝子は、ちょうど一皿の料理とそのレシピのような関係にあります。私たちの細胞の中では、このレシピに相当する遺伝子が数千個ずつ塊になって染色体を作っています。つまり染色体はレシピ本のようなものです。 |
加齢に伴い、妊娠しにくく、流産しやすくなる |
【図2】生殖補助医療(ART)による女性の年齢と妊娠率・流産率
高齢女性の妊孕性が低い原因は卵子の老化にあります。女性の加齢(=減数分裂再開までの期間が長くなる)に伴って卵子の減数分裂に不具合が生じやすくなり、染色体の過不足が生じやすくなります(解説)。 |
【高齢妊娠と染色体異常】 |
生まれてくる子どもの約3%には何らかの異常があるといわれています。染色体異常はそのうちの約4分の1を占めるに過ぎませんが、流産率の上昇と同じく染色体異常児を出産する割合も女性の加齢とともに上昇します。 |
【メモ】高齢妊娠(35歳以上の妊娠出産)では…
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【男性の加齢と妊孕性】 |
これまで女性の加齢の話をしてきましたが、それでは男性の加齢は関係がないのかというとそうではありません。 |
【終わりに】 |
女性が社会の中で自立し、しかも出産、育児と両立できる社会は理想的ですが、現実はそう簡単ではありません。少なくともどちらを優先させるか、自分の意志で選べる社会が望ましいはずです。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学大学院生命科学研究部
産科婦人科学 大場 隆 准教授 ・日本産科婦人科学会専門医 ・日本超音波学会専門医 ・日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医 ・日本生殖医学会生殖医療専門医 ・日本内分泌学会内分泌代謝科指導医 ・日本周産期・新生児医学会周産期指導医(母体・胎児) |