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「あれんじ」 2016年11月5日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第57回】大病院の裏側で

女性医療従事者によるリレーエッセー【第57回】

【第57回】大病院の裏側で

 節電の不夜城は、ほの暗い灯りのもれる救急病院。朝5時。国立熊本医療センターの薄暗い外来に、カチャンカチャンと鍵を開ける音が響いていく。深夜に外来に来てそのまま書き物などをしていると、その音に朝が来たことを知る。

 お掃除のチーフの方がすべてのドアの鍵を開けて、清掃の準備が進められていく。担当の方が丁寧に床を掃き、ピカピカに拭き上げていかれる。同じエリアは同じ担当のようで自然と顔見知りになる。

 病棟の清掃開始はそれよりは遅く、仕事前のバックヤードで楽しそうにおしゃべりしているのはフィリピン人の女性清掃員たち。病院だから、普通のお掃除の現場では見ないようなものも見るでしょうし、守秘義務もあるだろう。

 眠い顔でコーヒーを買いに院内売店に行く。朝7時から夜10時までのローソン。外の店舗に比べ半分の面積もないが、飲食物、本、雑貨、医療小物、介護用品からイベントチケットまで扱っている。

 見たところ3交代の顔ぶれで、店員さんは車いすの患者さんの買物の手伝いや、ご高齢の患者さんのお財布を一緒にのぞき込んでお勘定の手助け。大箱入りの絆創膏を小分けにして袋詰めなんて、普通のコンビニではないような仕事も院内売店ならではの光景。

 夕方6時ころ外来が済んでお弁当を買いに行く。病院受付の雑踏はもう静かになって、お見舞いと思しき人たちの往来がある。お掃除のチーフの方はまだ仕事中。「先生はいつも病院で夕ご飯ですか?」って。昼ごはんです。