【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
日露間には豊かな文化交流が!? 「比較文学」って面白い
先端の研究者をナビゲーターに熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を 分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。 それが「熊遊学ツーリズム」です。第4回のテーマは「比較文学」。さあ、「なるほど!」の旅をご一緒に…。 |
【はじめの1歩】 |
文学研究にはさまざまな手法がありますが、その一つが「比較文学」です。溝渕准教授の専門は日露比較文学。ロシア文学と日本文学を比較すると、いったい何が見えてくるのでしょうか? 興味津々ですね。 |
Point1 「比較文学」ってなに? |
「比較文学」という文学研究の手法は、19世紀にフランスで始まったとされています。一つの国の文学について研究するのではなく、いくつかの国や地域をまたいだ研究法です。「ざっくり説明すると『フランス学派』と『アメリカ学派』と呼ばれる2つの大きな流れがあります」と、熊本大学文学部コミュニケーション情報学科の溝渕園子准教授は説明します。 |
【メモ1】 シンデレラ・ストーリーは 世界中に900以上ある! |
世界の民話の代表格として挙げられるのがシンデレラ・ストーリーです。「継母にいじめられていた娘が試練を経て王子さまと出会い、結婚して幸せになる」というストーリー。広い意味では『白雪姫』もその一つに数えられます。シンデレラ・ストーリーは、世界中に900以上もあるといわれます。 |
Point2 境界地帯や越境系作家の文学 |
文学には、必ずしもその国独自のもの、その文化固有のものが反映されるとは限りません。例えば、植民地の場合は支配国の影響を多大に受けて文化が入り混じっていますし、ドイツとフランスの国境地帯にあるアルザス地方のように交互にドイツやフランスの領土になったところでは、地方文学といえども双方の文化の影響を受けています。こういう混合や境界地帯の文学を研究するのも比較文学の醍醐味(だいごみ)です。 |
【メモ2】 社会を反映する文学 |
医師の免許を持つ文学者は少なくありません。日本では斎藤茂吉や加賀乙彦、ロシアではチェーホフなどが有名です。その分、医学的な考え方や言葉が文学作品の中にたくさん入り込んでいます。 |
Point3 日本とロシアの比較文学 |
溝渕准教授の専門は、日本とロシアの比較文学、比較文化の研究です。特に、明治時代以降の日本文学に、ロシア文学がどのような影響を与えてきたか? あるいは、ロシアで日本文学がどのように読まれているのか、評価されているのか? ロシア文学に出てくる日本や日本人のイメージと、日本文学に出てくるロシア、ロシア人のイメージの比較などが、研究の主なテーマだそうです。 |
【メモ3】 ロシアで人気のある日本人作家は? |
ロシアでは2000年ごろから日本ブームが起き、その後のロシア人の意識調査で「親近感を感じる国」の1位が日本だったという報告もあります。この時の日本ブームの大きな起爆剤となったのが作家の村上春樹で、ロシアでは若者を中心に圧倒的な人気があります。芥川龍之介も人気があり、何回も作品集が出版されています。ノーベル賞作家の川端康成や大江健三郎もよく知られています。 |
Point4 映画にも影響を与えた歌舞伎 |
日本文化はロシア文化に少なからぬ影響を与えています。例えば、映画『戦艦ポチョムキン』で知られる映画監督のエイゼンシュテインは、日本の歌舞伎を見てモンタージュ理論への確信を新たにしたといわれ、映画の登場人物に見えを切らせたりしています。また、20世紀初頭に活躍した前衛的な演出で知られる舞台演出家・脚本家のメイエルホリドも、歌舞伎にヒントを得て方法論を確立させました。 |
【なるほど!】 |
以前「ロシアにはスシ・バーや日本食レストランがたくさんある」と聞いた時、意外な気がしましたが、溝渕先生のお話をうかがううちにナットク。明治時代以降、日本とロシア間には多くの文化交流があったんですね。文学を読めば、その国やその時代の人々の価値観がよく分かります。若者よ、文字離れなんてモッタイナイぞ! |
熊本大学文学部
コミュニケーション情報学科 溝渕園子准教授 小学生時代にボリショイ・バレエを見に行き、 |