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「あれんじ」 2016年3月5日号

【元気!の処方箋】
“元気で長生き”目指し 防ごう! ロコモティブシンドローム

 最近よく聞くようになったロコモティブシンドローム(ロコモ)。しかし、詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。

 そこで今回は、どういう症状を指し、どうすれば防げるのか、また予防する意義などについてお伝えします。

【はじめに】

 日本は世界にさきがけて超高齢社会を迎えています。これに伴い運動器(メモ)の障害も増加しており、入院して治療が必要となる運動器の障害は50歳以降に多発しています。

 ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の障害のために、「立つ」「歩く」などの移動能力が低下した状態をいいます。

 進行すると日常生活にも支障が生じ、要介護や寝たきりになるリスクが高くなります。


【メモ】 運動器とは?〜体を動かす仕組み

 普段何気なく動かしている「体」ですが、私たちが自分の体を自由に動かすことができるのは、骨、関節、筋肉や神経で構成される「運動器」の働きによるものです。

 私たちの体を車に例えると、運動器は自動車のエンジンやタイヤのようなものです。運動器のどのパーツが壊れても体はうまく動きません。


@なぜ今ロコモ? 【平均寿命と健康寿命】

 日本人の平均寿命は男性が約80歳、女性が約87歳。日本は世界トップラスの長寿国です。
平均寿命が延びる一方で、最近「健康寿命」という言葉をよく耳にするようになりました。「健康寿命」とは「日常生活において介護を必要とせず、自立した生活を送ることができる期間」のことを言います。

 この健康寿命は男性が71歳、女性は74歳です。ここで問題となるのは「健康寿命」と「平均寿命」の差です。

 平均寿命と健康寿命の差は「日常生活に制限のある“健康ではない期間”」を意味し、男性で約9年、女性で約13年あります。

 これは、自立した生活を送ることができず、介護を必要とする期間が平均で9〜13年もあるということです。長い人生、いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが必要なのです。


【介護の要因】
【図】
要支援・要介護になった原因
※平成25年厚生労働省国民生活基礎調査より
 ロコモパンフレット2015年度版

 要支援者とは「要介護者となる可能性があり、身支度や家事など日常生活に支援が必要な人」のこと。要介護者は「身体または精神上の障害によって入浴や排泄、食事といった日常生活の基本的な行動について継続して介護を必要とする人」のことです。

 この要支援・要介護状態は健康寿命の最大の敵です。そしてその要支援・要介護になった原因の1位が、「運動器の障害(ロコモ)」なのです。


【ロコモの診断(ロコチェック)】


【介護の現状と問題点】

 日本国内で要支援・要介護者と認定された人は、平成24年度末で約561万人となっており、平成13年度末から約263万人も増加しています。

 そこで問題となっているのが、介護保険サービス利用の大幅な伸びに伴い、介護保険の総費用が急速に増大していることです。

 また、要支援・要介護者を介護する側の年齢も高く、同居介護者の男性65%、女性60%が60歳以上である、いわゆる「老老介護」のケースも相当数に及んでいます。

 さらに、家族の介護のために離職や転職を余儀なくされた人が増加しており、家庭・社会
生活の破綻につながる深刻な問題となっています。

 よって、一人でも多くの高齢者が自立して元気に暮らすことが、これらの問題解決のカギになります。


Aロコモの要因

 ロコモの原因にはさまざまなものが挙げられますが、なかでも「骨粗しょう症」「変形性関節症」「変形性脊椎症」の3つの疾患が3大要因として位置づけられています。

 「骨粗しょう症」は骨の中がスカスカの状態となり、骨がもろくなった状態のことをいいます。ちょっと転んだだけでも太ももの付け根や背骨、手首などの骨が骨折しやすくなってしまいます。

 「変形性関節症」は膝関節や股関節に多く、骨と骨の間のクッションの役割をする関節軟骨がすり減ることで、痛みや曲げ伸ばしが十分できないなどの症状が生じます。

 「変形性脊椎症」は背骨にかかる負担の結果、椎間板がすり減ったり、骨の変形が生じたりします。神経が圧迫されると「脊柱管狭窄症」という病気を引き起こし、脚の痛みやしびれを生じます。

 これらが原因で思うように身体が動かせないと、外出が面倒になったり、できなくなってしまいます。すると、さらに筋力低下や関節痛が生じ、それが運動不足などを招き、寝たきりになるといった「負の連鎖」を起こすことになります。何も対策をしなければ、歳を重ねるごとにロコモになり、要支援・要介護状態となってしまう危険性があるのです。


Bロコモの治療と予防
【ロコトレその1】
開眼片脚立ち
●左右1分間ずつ、1日3回行いましょう。
「開眼片脚立ち」は「ダイナミックフラミンゴ体操」とも言われ、1分間の片脚起立は53分間の歩行に匹敵し、大腿骨頚部の骨密度が増強し、転倒予防に効果的です。

 「老化は誰も逆らえないんだから、ロコモは仕方がないこと」なんて決め込んでいませんか? 実は、早いうちから対策を行うことでロコモを予防することができ、健康寿命を延ばすことができるんです。

 要介護や寝たきりを予防する上では歩行能力を維持(改善)することが必要です。

 そのために激しい運動は必要ありません。バランス能力をつける「開眼片脚立ち」と、下肢筋力をつける「スクワット」のたった2つの「ロコトレ」(下記)を毎日行うことが重要です。

 くれぐれも無理に試して転んだりしないよう注意してください。支えが必要な人は、必ず机に手や指をついて行い、頑張りすぎず自分のペースで行ってください。 

 また、腰や関節の痛み、筋力の衰え、ふらつきといった症状が、最近悪化してきている場合は、まず医師の診察を必ず受けてください。

 ロコトレだけでなく、運動を習慣的に行うこともロコモの予防・改善に有効です。
 これからも人生をいきいきと楽しむために、今回ご紹介したロコモの内容をお役立てください。


【ロコトレその2】
スクワット
●深呼吸をするペースで、5〜6回繰り返します。これを1日3回行いましょう。
●支えが必要な人は、机に手や指をついて行いましょう。
●椅子に腰かけるように、お尻をゆっくり下ろします。
●お尻を軽く下ろすところから始めて、膝は曲がっても90度を超えないようにします。
●安全のために椅子やソファーの前で行いましょう。
「スクワット」は大腿部や腰の筋力強化につながります。


執筆いただいたのは
熊本大学医学部附属病院
リハビリテーション科
冨口 若菜 助教  

・日本整形外科学会専門医
・日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
・日本体育協会公認スポーツドクター