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「あれんじ」 2016年2月6日号

【元気!の処方箋】
あなたもきっとやめられる! 禁煙の道、教えます

 受動喫煙を含め、喫煙が健康に害を及ぼすことは広く知られています。しかし、「それでもやっぱりやめられない」という人たちもいます。

 そこで今回は、喫煙が体に及ぼす影響とともに自力禁煙のコツや、保険診療で受けることができる禁煙治療について紹介します。

【喫煙が体に及ぼす影響】すぐ水に溶ける煙、有害物質は全身に
【図1】
たばこの煙に含まれている化学物質の一部の例と
相当する身近な物質
出典 UICC:たばこの煙から子どもたちを守るには

 喫煙が影響する病気といえばすぐに肺がんや、以前は肺気腫といわれたCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が浮かびます。

 しかし肺以外にも、口腔がんや食道がん、胃・十二指腸潰瘍などの消化器疾患や、膀胱や尿管など泌尿器系のがんの発生リスクも高まります。また、高血圧や糖尿病、慢性腎炎がある人の喫煙は、腎不全を進行しやすくします。

 全身の多くの疾患にかかわり、日本では、たばこが原因で年間13万人が死亡しています。

 たばこの煙には 4700 種類の化学物質と70 種類の発がん性物質が含まれています(図1)。

 煙は非常に水に溶けやすい性質を持っており、口に入ればすぐ唾液に溶け、肺に入ればすぐ血液に溶けます。肺に入ると5〜10秒でニコチンが脳に到達するというデータが得られています。たばこを吸う「吸引」とは、血管を通さずして静脈注射と同じくらい血中濃度を上げる方法なのです。

 この有害な煙が溶けて口に入れば口腔内が、肺に入れば肺が、血液に入れば血管や内臓が荒らされ、全身に病気が起こるのは当然なのです。


空気中に漂う「環境たばこ煙」 年間6800人が受動喫煙で死亡
【図2】
副流煙の方が多い有害物質の例
(数字は主流煙に対する値)

 喫煙は、本人の健康を害するだけではありません。

 たばこの煙は、点火部から立ち昇る「副流煙」、喫煙により口腔や肺に達する「主流煙」。これを吐き出す「呼出煙」に分けられます。副流煙と呼出煙が混ざったものが空気中に漂っており、これを「環境たばこ煙」と言います。これを吸い込むのが受動喫煙です。

 そこで問題なのが、有害物質の発生は主流煙より副流煙の方が多いことです(図2)。

 受動喫煙によって、体・脳の成長阻害、乳幼児突然死症候群、肺炎、がん、心臓病、脳卒中など、さまざまな疾患が発生します。国立がん研究センターでは、受動喫煙が原因で肺がんや心臓病で死亡する人は、国内で年間6800人という推計値を発表しています(2010年)。


40%の子どもが受動喫煙の被害に

 換気扇の下などで吸ったり、空気清浄機を作動させたり、「家族の迷惑にならないように工夫している」と話す人もいますが、これらに効果は望めません。

 また、そこに吸う人が今いなくても、日常的に吸っている部屋では壁や家具などにヤニ(タール)が付着しており、それが空気中に溶け出したものを吸い込む「サードハンドスモーク」という3次被害に関しても最近、研究がされています。

 つまり、屋内を禁煙にしない限り、受動喫煙の防止にはならないということです。

 世界では、およそ40%の子どもが日常的に受動喫煙にさらされているといわれています。市民団体「くまもと禁煙推進フォーラム」の調査によれば、県民の87%が受動喫煙を「迷惑」と感じているという結果が出ています。

 女性の喫煙については、子宮頸がんや乳がんなど女性特有のがんのリスクを高めるなど自身への影響だけでなく、母親の喫煙は胎児や新生児、乳幼児に対する悪影響もあります。喫煙が子宮外妊娠の率を高めることや、妊娠中の喫煙が流産や死産などの危険性を高めることも分かってきているのです。


【メモ】たばこ煙からのPM2.5 規制値を大きく上回ることも

 日本への越境汚染に敏感になっている人も多いPM2.5。実は、たばこの煙からも出ています。日本のPM2.5の環境基準は1日当たり平均35㎍/㎥。その倍の70が屋外の暫定規制値ですが、自由に喫煙できる混み合う店舗内では700前後、自動車内で2人喫煙すれば1600と、規制値を大きく上回ります。

 越境汚染より国内での、しかも屋内での被害を心配しなければならない状況です。客はもちろん、常にその環境で働かなければならない従業員の健康に関心を持ちたいものです。


【禁煙にチャレンジ!】自力で、禁煙外来で、あなたに合った方法で

 自分のため、家族のためにも、禁煙したいと考えている人は多いはず。しかし、それが難しいのは、ニコチン依存症になっているためです。吸わない時間が続くとイライラし、吸えばホッとする。その繰り返しが毎日の喫煙本数になっているわけです。

 ですから禁煙するには、ニコチン切れに伴う症状を軽くする行動をしたり、症状が起こりにくくなる環境を作ることがポイントになります。


【自力禁煙】自己流ではなく正しい方法で成功を

 自力禁煙のポイントを知ると、自己流禁煙より楽に禁煙できます。

@期日を決めて、一気に禁煙を実行しましょう
 徐々に減らそうとする、軽いたばこに変えるなどは、むしろ禁煙に失敗する可能性が高くなります。

A一定の禁断症状を前もって覚悟しましょう
 ニコチン離脱症状(イライラや頭痛、だるさなど)のピークは、禁煙開始から2〜3日目。その後、ゆるやかに軽減します。

B吸いやすい行動を把握しましょう
 飲酒や、食後など喫煙したくなる機会をあらかじめ意識して、対処法を考えておきましょう。

C喫煙のきっかけとなる環境を改善しましょう
 たばこはもちろん、ライターや灰皿を処分しましょう。禁煙しやすい環境作りは大変重要です。

D吸いたい気持ちを軽くするには
 吸いたくなったら、代わりの行動をとりましょう。
 深呼吸、歯磨き、マウスウオッシュ、水やお茶を飲む、散歩や運動、アロマなどの香りをかぐ、歌を歌う…など、自分に合った代わりのものを具体的に考えておきましょう。


【禁煙外来】禁煙補助薬を使い3カ月で禁煙

 禁煙外来では、患者さんの喫煙習慣や経歴、禁煙したい理由やその気持ちの強さなどを聞き、カウンセリングを行いながら、禁煙補助薬を使って禁煙をサポートします。
 
 禁煙補助薬には、ニコチン切れに伴う症状を軽減する貼り薬と、たばこをおいしいと感じにくくなる作用のある飲み薬があります。貼り薬にするか、飲み薬にするかは、初診時に医師と相談して決めましょう。

 基本的な薬剤の処方期間は、前者が8週間、後者が12週間。きちんと最後まで受診すれば、3カ月間で禁断症状が取れ、たばこを吸いたいと思わなくなり、ほとんどの人が禁煙に成功します。

 貼り薬、飲み薬ともに使う治療での費用は、3割負担の場合、トータルで約2万円弱です。


【うまく続き始めたら】

 うまく禁煙が続き始めても油断は禁物です。酒席などでつい1本をもらうと、すぐに喫煙が再発してしまいます。喫煙は依存症という病気であることを忘れず、もらいたい気分が湧くのは自然なことと受け止めつつ、その気分には従わないことが大事です。

 やり過ごしていけば、吸いたい気分も徐々に起こらなくなります。

 正しい方法を取れば、きっとあなたにもできます! 禁煙の道、一歩一歩進みましょう!


話を聞いたのは
たかの呼吸器科内科クリニック
高野 義久 院長 
くまもと禁煙推進フォーラム副代表

1989年熊本大学医学部卒業後、熊本大学医学部附属病院第一内科、済生会熊本病院循環器内科、熊本労災病院呼吸器内科副部長などを経て、2000年たかの呼吸器科内科クリニック院長。
日本内科学会(総合内科専門医)、日本呼吸器学会(専門医)、日本禁煙学会(認定専門指導者)