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「あれんじ」 2016年1月9日号

【元気!の処方箋】
どうして起きるの?改善できる? 冷えから解放されたい!

 女性からよく聞く「冷え」の悩み。中には、日常生活に支障があるほどの症状を訴える人もいるそうです。

 そこで今回は、「冷え」がなぜ起きるかとともに、体に及ぼす影響を伝え、改善に向けての対策を紹介します。

【なぜ冷える?】熱を「作る」「配る」 2つの面から見てみましょう

 普通は寒さを感じないような温度の中でも、手足や腰など体の一部、もしくは全身が冷えて不快な状態を「冷え症」と言います。女性の約半数、男性ではおよそ1割が「冷え」を自覚しているといわれています。

 冷えの原因は、大きくいうと

◎「熱を(体内で)作る」こと がうまくいかない
◎「熱を(体内に)配る」こと がうまくいかない

ことによって起きます。

 食べ物のエネルギーをもとに体内で熱を作りますが、最も多くの熱を生み出しているのは筋肉で、熱量全体の約6割を占めます。そのため、ダイエットや胃腸虚弱、運動不足などにより熱量の不足が起こります。また、女性は男性より約1割筋肉が少ないため、どうしても男性より発熱量が少なく、冷えることが多くなるわけです。

 「熱を配る」のは血液の役目で、体内で作られた熱が血液によって全身にくまなく運ばれて温かい状態が理想ですが、血液がドロドロだったり、低血圧や動脈硬化などで末梢の血流が悪くなったりすると、手足など末端が冷えてしまいます。

 特に、血流調節などを行っている自律神経は、冷えの有無に大きな影響を与えています。


「体を守る」仕組み=自律神経の働きから起きることも

 自律神経には、緊張モードの交感神経と休息モードの副交感神経の2種類の神経があり、内外の変化に対して心身を守るために、意思とは無関係に、いわば自動的に働きます。

 私たちが「寒い」と感じると、内臓などの深部体温を守るため交感神経のスイッチが入り、末梢血管が収縮して手足が冷えます。これは体を守るための反応で、必ずしも悪いことではありませんが、いったんこのスイッチが入ると、温かいところに移動しても戻らない人も多いのです。

 また、自律神経はストレスの影響を受けて緊張モードになりやすいため、心身ともにリラックスして休息モードに切り替えることは、冷えの改善につながるのです。


【気を付けたい“冷え” 】病気の症状として現れる冷えに注意

 冷えはそれ自体不快な症状ですが、甲状腺機能低下症や膠原(こうげん)病、心臓や血管などの病気の、一つの症状として現れることもあります。

 例えば

◎冷えが段々ひどくなる
◎手足の左右片方だけがとても冷える
◎冷えた指先が真っ白になる
◎疲れやすく、体重が増える

といったことがあれば、内科への受診を勧めます。

 そこで原因となる病気が分かれば、その治療によって症状は緩和されます。

 そういった病気が原因ではなく冷える場合は、まずは日常生活でできる改善のための工夫をしてみましょう。

 また、冷えが原因で起こる他の症状についても認識しておくことが大事です。年齢によって傾向があるので、紹介します。

【若い世代】
頭重感、めまい、たちくらみ、など

【更年期】
多汗、ほてり、イライラ、足は冷えて頭はのぼせる、など

【55歳以上】
疲れやすい、外出などの行動がおっくうになる、など

 冷えの自覚があまりない人でも、こういった症状が気になる場合は、これから伝える改善策を講じてみてください。


【“冷え”を改善するには】冷えが起きるメカニズムに対応しましょう

先に伝えた冷えの原因から考えると、

◎「熱をうまく作る」ことができる体にする
◎「熱をうまく配る」ため、自律神経のバランスを整える

ことが大事です。


【食生活】

@朝ご飯にタンパク質を

 体温も代謝も一番低い朝、朝ご飯を食べることはとても大事。炭水化物に偏りがちな朝ご飯ですが、パン食なら卵やチーズ、和食なら納豆や豆腐などを少し足すだけで、熱を効率的に産生します。

A消化がいいもの、温かいものを

 食事は熱を作るエネルギーの大もと。胃腸が弱って栄養が吸収されないと熱を作る材料不足になります。消化がいいものを食べるようにしましょう。また、消化酵素が最も働きやすい温度は37度。温かいものは比較的スムーズに消化します。

  ショウガやサンショウなど漢方薬にも使われるような体を温める食材を食生活に取り入れて。ただし、唐辛子やネギ、ニンニクなどは胃腸に負担になることもあるので注意。


【生活習慣】

@筋肉をつけるために運動を

 熱を最も生み出す筋肉をつけるには運動です。なるべく歩く、エレベーターを使わず階段を使うなど、自分ができる運動をぜひ生活に取り入れてください。

Aゆったりした服でスイッチオフ!

 仕事や外出から帰ったら、スーツなどのかちっとした衣装やストッキングのような締め付けの強い服から、肌触りの良い締め付けのない服に着替えて、緊張のスイッチをオフにしましょう。

B38度〜40度くらいのお風呂でリラックス

 リラックスするには、お風呂が効果的です。それも38度〜40度くらいの、体が「安心、安全」と感じる温度で。熱いお風呂では、体はリラックスモードになりません。


【衣服】

@首などの温度センサー部分を温める

 首、二の腕、肩甲骨辺りは、温度センサー的な役目を果たしています。これは、脳を熱の変動から守るために備わった機能です。ここが寒いと感じたら、「手足に熱を回している場合じゃない」という指令が出ます。そうしていったん手足が冷えると戻らなくなるのが冷え症の特徴です。この指令を出さないために、マフラーやショールを巻く、コートの襟を立てるなどの防寒が効果的。

Aお腹周りを温める

 冷える手先、足先を温めることに注意がいきがちですが、お腹周りが冷えると内臓を守るために、手足に熱を回さなくなってしまいます。お腹周りをしっかり保温することが、手足を冷やさないことにつながります。

B室内外の温度差に対応

自律神経がスムーズに対応できる温度変化は7度までといわれています。温かい室内から寒い外へ、またその逆など20度近い温度差にさらされることも多い現代社会。自律性の体温調節だけに頼っていると自律神経に無理が来ます。温度変化に対応する服装調節も大事です。


話を聞いたのは

医療法人祐基会 帯山中央病院

渡邉 賀子 理事長・院長 

1997年北里研究所で日本初の「冷え症外来」を開設。2003年慶應義塾大学病院漢方クリニックで女性専門外来「漢方女性抗加齢外来」を開設。慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師、麻布ミューズクリニック名誉院長。
医学博士・漢方専門医・日本東洋医学会指導医