【元気!の処方箋】
かかりやすく、症状が出にくい高齢者の肺炎
高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期接種のお知らせを、テレビコマーシャルなどで目にする機会が増えました。それだけ予防が大事な高齢者の肺炎について、お伝えします。 |
はじめに |
【図1】死因別にみた死亡率の移り変わり
厚生労働省:平成27年我が国の人口動態(平成25年までの動向)より 肺炎による死亡は戦後いったん減少しましたが、1973(昭和48)年以降は増加に転じ、2011(平成23)年には脳血管障害を抜いてわが国の死亡原因第3位となりました(図1)。 |
【図2】肺炎の年齢階級別死亡率
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【肺炎の症状】高齢者では症状が出にくい! |
肺炎の症状としては咳、痰、発熱、息苦しさなどがみられますが、かぜや気管支炎でも同様の症状がみられるため自覚症状だけで肺炎と区別することは困難です。肺の聴診や胸部レントゲン写真、血液検査などで診断します。さらに喀痰(かくたん)検査など原因微生物を調べる検査を追加します。 |
【肺炎の原因】高齢者が肺炎にかかりやすい理由 |
肺炎にかかりやすい、重症になりやすい人
□ 日常生活の活動性が低下している □ 現在もタバコを吸っている □ 虫歯や歯周病などがあり、口腔内の衛生状態が不良である □ 食事中に「むせ」や咳込みを自覚することがある □ 呼吸器疾患(気管支喘息、COPD/肺気腫、気管支拡張症、 結核後遺症、間質性肺炎など)がある □ 脳血管障害(脳卒中)や神経疾患の既往がある □ 認知機能の低下(認知症、高次脳機能障害など)がある □ 頭頸部がん(舌がん、咽頭がん、喉頭がんなど)の既往がある □ 食道がん、胃がんなどの手術歴がある □ コントロールが不十分な糖尿病がある □ ステロイド内服や抗がん剤治療を受けている □ 慢性腎不全(透析含む)、肝硬変、心不全などの持病がある □ 過去に肺炎に罹患したことがある ※どれかひとつでも該当する人は要注意。 該当項目が多いほど危険度は高くなります。 高齢者の肺炎では「誤嚥性肺炎」が多いことが知られています。誤嚥性肺炎の発症には水や食事を飲み込む能力の低下と咳反射(食べ物や液体などの異物が気管に入った時に、異物を体から出そうとする反射)の低下が大きく関わっています。また、加齢による免疫力低下も影響します。 |
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【肺炎の予防】重要な誤嚥予防とワクチン接種 |
高齢者の肺炎予防では、「誤嚥防止」と「ワクチン接種」が特に重要です。 |
【終わりに】 |
高齢者の肺炎は加齢による身体機能の低下と深く関係しているため、長生きすればするほど肺炎のリスクと向き合う必要があります。肺炎にかかったことがない方も早期から積極的に体を動かして体力を維持し、肺炎予防に心がけましょう。 |
【メモ】高齢者は結核にも要注意 |
現在の国内での新規結核患者の半数以上は65歳以降の高齢者です。高齢者の結核はその多くが、若いころに感染していた結核菌が長年の休眠状態から覚めて活動を再開し発病する「内因性再燃」と考えられます。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学医学部附属病院 |