【四季の風】
第31回 小鳥来る
秋は北方から鳥が渡ってくる。鷹、鴨、鶴などとは別に、鶸(ひわ)、鶫(つぐみ)、連雀(れんじゃく)、尉鶲(じょうびたき)のような小型の渡り鳥を、俳句では「小鳥」といい、「小鳥来る」という。 この小鳥がまるで雲のように群れてくるのを「鳥雲」、その羽音が風のように聞こえるのを「鳥風」、その色彩が美しいものをとくに「色鳥」とよぶが、これらの季語を生んだ先人たちのセンスの良さには驚くばかりだ。 金峰山の山道を歩いていたときのこと。長袖のシャツの袖をめくると、それはハッとするような緋色。近くに小鳥の気配を感じてすっと腕を伸ばすと、私の手の甲に、それは美しい小鳥が舞い降りた。いいタイミングで、これはまるで「相聞(そうもん)」。私と小鳥が心通わせた瞬間。うれしくて、その日は一日、心あたたかだった。 |
袖口の裏の緋色や小鳥来る 岩岡中正 |
心通わせるといえば、蕪村の次の句。 |