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「あれんじ」 2015年8月1日号

【元気!の処方箋】
よく聞くけれど、よくは知らない「ヘルペス」〜単純ヘルペスと帯状疱疹〜

 唇と肌の境目にぷつっとできるのも「ヘルペス」なら、強い痛みで知られる帯状疱疹も「ヘルペス」? 今回は、「よく聞くけれど、よくは知らない」ヘルペスについてお伝えします。

【はじめに】
【図1】

 ヘルペス(疱疹)とは、はれぼったい赤い斑の中に、粟粒大の透明な水ぶくれ(水疱)あるいは、黄色い水ぶくれ(膿疱)が集まり発生した状態(図1)を指します。
 5つほどの原因が挙げられますが、その代表的原因が単純ヘルペスウイルス1型と2型、水痘・帯状疱疹ウイルスの3つです。


【再発型単純ヘルペスと帯状疱疹発症の経緯】発熱・紫外線・ストレス・疲労などでウイルスが再活性化

 ヘルペスの原因となるウイルスは生まれつきヒトに感染しているものではなく、生後に初めて感染(初感染)します。それぞれのウイルスに特有な症状を呈し、感染したことを患者さん本人が気づく場合(顕性感染)と、症状が軽く、感染したことに気づかない場合(不顕性感染)があります。単純ヘルペスウイルス1型は不顕性感染のことが多く、同2型と水痘・帯状疱疹ウイルスは大半が顕性感染と考えてよいようです。
 初感染後は、頭と顔の皮膚の知覚をつかさどる脳の中の特定の部位(三叉神経節)か、頚部・胴体・四肢の皮膚の知覚をつかさどる脊髄の中の特定の部位(脊髄神経後根神経節)かに住み着き(潜伏し)、初感染時に成立したウイルスに対する免疫力で、住み着いた所に閉じ込められます。
 しかし初感染から時が過ぎると、個々のウイルスを閉じ込めていた免疫力に陰りが生じ、発熱・紫外線・ストレス・疲労などを契機にこれらのウイルスが知覚神経節から這い出してきて(再活性化し)、知覚神経節から神経を通って皮膚・粘膜に達して、皮膚・粘膜を傷害し、水疱・膿疱・びらん・潰瘍を作り、ヘルペスの発症を知ることになります。
 これが、再発型単純ヘルペスと帯状疱疹の発症です。


【単純ヘルペスと帯状疱疹それぞれの特徴】再発を繰り返す単純ヘルペス 激しい症状を来す帯状疱疹

 単純ヘルペスには、口唇ヘルペスと臀部(性器)ヘルペスに代表される、部位名を冠したヘルペス感染症が9つほど挙げられます。
 口唇ヘルペスは最も頻度が高く、初感染の場合もありますが、
ほとんどの方は再発型として発症します。口唇と皮膚の境界部に好発しますが、頬部・鼻部に及ぶこともあります。
 軽いそう痒(よう)や違和感を前駆症として浮腫性紅斑が出現し、半日以内に水疱化し、ヘルペスという皮膚病変が整い、口唇ヘルペスと診断されます。全経過4〜14日で治癒します。再発の頻度は年に1回程度までの方が多く、単純ヘルペスウイルス1型感染によることが多いです。
 臀部ヘルペスはストレス・疲労・月経など種々の誘因の後、臀部にそう痒や軽い痛みが生じ、半日以内に小さな浮腫性紅斑がみられ、すぐに小水疱・びらんが加わり、臀部ヘルペスと診断されます。ほとんどが再発型であり、年に7回程度再発を繰り返します。多くは単純ヘルペスウイルス2型感染によるものです。
 帯状疱疹では、発疹が出る数日〜1週間前から神経痛のような痛みや知覚異常を自覚し、なぜ痛いのか悩んでいるうちに、痛かった所にヘルペスという皮膚病変が少数出現し、その後も3〜5日間ほど新生が続き、ヘルペスが帯状に並ぶ(図2)と、誰の目にも病名が判明します。大病を患ってない方では、一生に二度は経験しない病気です。
以上、

@単純ヘルペスは再発を繰り返し、前駆症状に乏しい一方、A帯状疱疹では再発の心配はまずなく、激しい前駆症状を来し、治療を間違えると帯状疱疹後神経痛を残しやすい

という特徴があります。


【図2】帯状疱疹


【単純ヘルペスと帯状疱疹 違いは何?】帯状疱疹は治療を間違えると運動神経まひなどを起こす心配も
【図3】単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化時の挙動の違い

【単純ヘルペスウイルスの場合】
単純ヘルペスウイルスは神経線維のなかを下降し、
神経終末で増殖し、散在性の病変を形成する

 図3に示すように、単純ヘルペスウイルスは、血液やリンパ液に触れることなく神経線維のなかを知覚神経節から皮膚まで移動し、表皮直下の神経終末で免疫細胞に初めて出会います。そのため免疫力を高めるようには作用せず、炎症反応も極めて弱く、再発を抑制できません。その一方で炎症反応が弱いために症候性神経痛も弱くて済んでいるものと理解できます。
 一方、帯状疱疹ウイルスは、神経鞘という血液やリンパ液に触れ続ける所を知覚神経節から皮膚まで移動するため、免疫力を高めるように作用し、炎症反応も極めて強いものとなります。この免疫・炎症反応が再発を抑制できる一方で、症候性神経痛を大変強く発症させているものと考えられます。
 そのため治療・生活指導を一歩間違えると、運動神経まひや帯状疱疹後神経痛などで悩み続けることになる心配があります。


【水痘帯状疱疹ウイルスの場合】
水痘・帯状疱疹ウイルスは神経線維束に沿って下降し、
神経支配領域に沿って増殖し、帯状疱疹を発症する


【診断(検査)と治療】抗ウイルス薬の処方を早期に 帯状疱疹部は冷やさないように
【図4】ウイルス性巨細胞

 診断には症状でおおよそ事足りますが、確認のため次の手順で検査を行います。
 まず水疱内容のギムザ染色を1分ほどで行い(ツワンク試験)、大型の巨細胞を見出し(図4)、ウイルス性水疱であることを確認します。次に水疱天蓋やかさぶたを検査材料としてPCR法というやり方でウイルス遺伝子を増幅し、「単純ヘルペスウイルス1型、同2型、水痘・帯状疱疹ウイルスのいずれで、この病気が起こっているか」の確認検査を行います。
 単純ヘルペスの治療としては、医療機関で抗ウイルス薬5日間の処方を早期に受けることをおすすめします。
 帯状疱疹の治療としては、医療機関で抗ウイルス薬7日間の点滴静注または内服薬の投与を受けることをおすすめします。
 帯状疱疹後神経痛で悩まないで済むように、早期の神経ブロックを開始する一方で、帯状疱疹部を冷却しないこと、入浴や使い捨てカイロなどで病変部を温めることが必要です。


執筆いただいたのは
くまもと森都総合病院
城野 昌義 副院長
熊本大学医学部昭和48年卒
熊本大学医学部医学科臨床教授
熊本皮膚科医会会長
日本皮膚科学会専門医
難病指定医