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「あれんじ」 2015年6月6日号

【慈愛の心 医心伝心】
第46回「寄り添うこと」の大切さ

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第46回】

第46回「寄り添うこと」の大切さ
済生会熊本病院 患者相談支援室   
医療ソーシャルワーカー 西川 朋子

 「今日の夜は家の近くにあるタコ焼きを食べるよ。早く元気になってまた遊びに来るから。いろいろありがとう」と手を振って、自宅近くの医療機関へ転院されていったAさんの笑顔が思い出されます。

 Aさんとの出会いは今から2年前でした。がんを患い手術や抗がん剤の治療が必要になった当時のAさんは、収入がなくなってしまうことで、医療費支払いの不安や介護が必要な妻の心配などさまざまなサポートが必要な状況となっていたのです。

 そこで、Aさんやご家族の意向を尊重しながら、利用できる制度やサービスの情報提供、
関係機関との調整を行いました。Aさんにとってもご家族にとってもできるだけ負担にならないためにはどのような環境をつくっていくことがよいのか、Aさんと何度も話し合いを重ねました。

 抗がん剤治療の継続が難しい状況になったことを医師に告げられたAさんは「今日は外来の日じゃなかけど、いろいろ話をしたくて来たよ。病気になったことをいっそのこと忘れてしまいたい。きつい思いをしてここまで頑張ってきたのに…」と、胸の内を話されたこともありました。

 医療ソーシャルワーカーになって10年。多くの方々と出会い、そしてAさんとの関わりの中で医療ソーシャルワーカーとしての役割をあらためて考える機会を得ました。患者さんの不安や悩み、さまざまな思いに耳を傾け受けとめること、そしてその気持ちに「寄り添うこと」の大切さを感じました。

 これからも医療ソーシャルワーカーとして多くの方々の心の支えになる存在であり続けたいと思います。