熊本大学医学部附属病院
神経精神科発達障がい医療センター
特任助教 田中 恭子
月日の経つのが年々早くなるように感じます。自分自身は大して変化はないようですが、子どもを診療していると彼らの変化に驚かされます。
十年一昔と言いますが、子どもにとって十年は大きな意味があります。診療を始めた時は小学生だった子が、成人して「仕事を始めました」と便りをくれたりします。人がこれほど劇的に変化を遂げる時期は、他にないのではないでしょうか。
毎回の診察では、子どもの変化は分からないものです。同じ場所で足踏みを続けているように見える時もあります。子どもも親御さんも先が見えず不安になります。治療者の私も、ただ楽観しているわけではなく、どうすれば成長していけるのかと一緒に悩みます。
けれどいつの間にか、彼らは大人になっていくのです。
子どもたちのどうしようもなかった不安感やいらいら感は少しずつ収まり、「まあ、そういうこともあるよ」と折り合えるようになったりします。「ああ、大人になったのだな」と、私は気づきます。
どんな子どももさまざまな経験をしながら、少しずつ大人になっていきます。もちろん大人になっても楽なことばかりではありませんが、「子ども時代をよく頑張って乗り切ったね」と、彼らの成長を誇らしく、うれしく感じます。
自転車の練習をする時、大人が手を添え、気づかれないように手を離し、いつの間にか子ども一人で乗れるようになります。私の役割は、そんなふうに子どもを見守りながら、彼らが大人になるのをそっと見送ることだと思います。 |