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「あれんじ」 2015年5月2日号

【元気!の処方箋】
全身の疾患にかかわる歯周病 しっかり予防・治療して、健やかに

 痛みがないため気づかぬうちに進行してしまうことが多い歯周病。最近では、糖尿病や循環器疾患など全身の疾患と関係があることが分かってきました。

 そこで今回は、歯周病の治療や予防、全身疾患にどう影響するかなどを専門医に聞きました。(取材・文/坂本ミオ)

はじめに

 歯周病は、細菌の感染によって引き起こされます。歯肉が赤くなったり腫れたり、出血するなどの症状が出ますが、むし歯とは異なり、ほとんどの場合、痛みがありません。そのため、治療しない間に進行してしまう人が多いようです。

 痛みがないからと放置し悪化させてしまうと、歯を支える土台となる歯槽骨を含む歯周組織がゆるみ、歯がゆらゆら動くようになります。抜歯しなければならなくなってしまうこともあります。

 初期も含めると、成人の7、8割は歯周病にかかっていると言われます。下のチェック表で自身の状況を確認してみましょう。


〜思い当たる症状をチェックしましょう!〜 歯周病のセルフチェック


原因と進行 〜不十分なケアなどで歯垢、歯石に…

 口の中には700種類以上の細菌がいます。それらは普段悪いことをしているわけではありません。しかし、ブラッシングなどのケアが不十分だったりすることで、細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面につきます。これが歯垢(プラーク)です。

 歯垢は非常に多くの細菌とその産生物で構成されており、その中に歯周病を引き起こす原因菌が存在します。

 取り除かれないままでいると歯垢は硬くなり、歯石と呼ばれる物質に変化。歯の表面に強固に付着します。こうなると、ブラッシングだけで簡単に取り除くことはできません。

 さらに、歯石やその周りに細菌が入り込み、歯周病の進行が進みます。


歯周病と全身疾患 〜遠く離れた臓器に悪さ

 歯周病は、口腔内の問題にとどまりません。糖尿病や循環器疾患、低体重児出産など、幅広い年齢層に関係する疾患に影響があることが分かってきています。

【糖尿病】

歯周病の危険因子=糖尿病
糖尿病の合併症=歯周病

 糖尿病と歯周病は共に代表的な生活習慣病です。そして、糖尿病は歯周病の危険因子であり、一方、歯周病は糖尿病の合併症でもあります。両者は相互に悪影響を及ぼし合う関係といえます。

 そこで、歯周病を改善することで、糖尿病をコントロールする取り組みが行われています。

【循環器疾患】

予期せぬ心停止(突然死)にかかわる!?

 急性心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死が包括された「急性冠症候群」は、予期せぬ心停止の原因となる疾患の代表です。

 この急性冠症候群では歯周病の重症度が高いことが、熊本大学医学部附属病院歯科口腔外科と循環器内科の共同研究で明らかになっています。

 また、歯周病の進行は動脈硬化や高血圧症と関連しており、冠動脈疾患の独立した危険因子となっていることなどが分かっています。

 歯周病が心臓や子宮など離れた臓器に影響するのは、サイトカインが血液中を流れて、行く先々で悪さをするからだと考えられています。

 歯周病は口腔内だけにとどまらないことを理解して、きちんとした口腔ケアを継続すること。それが、健康や命を守ることになるのです。


【早産・低体重児出産】

お母さんの歯周病がおなかの赤ちゃんに影響

  妊娠している女性が歯周病の場合、早産や低体重児出産の割合が高くなるというデータが知られています。

 早産や低体重で生まれると、脳や目の障害など、さまざまな危険性があります。

 その原因は、歯周病の病巣から出るサイトカインという炎症性物質が血管内に入り、子宮筋を収縮させるスイッチを誤って入れてしまうのではないかと考えられています。

 妊娠中は、口の中の細菌が増えやすくなり、加えて、食事や間食が増える、つわりで歯磨きが十分にできない、などの理由から歯周病が悪化しやすくなります。


【そのほかにも…】

骨粗しょう症や認知症との関係

 加齢とともに気になる骨粗しょう症。特に閉経後の女性は、骨を丈夫にするエストロゲンという女性ホルモンが少なくなるため、骨粗しょう症になりやすくなることが知られています。

 その骨粗しょう症の人に歯周病が多い、歯周病が重症だと骨粗しょう症も進んでいるといった報告もされています。

 また、認知症と歯周病の関係も研究されているところです。「よくかむ人は、しっかりしている」とよく聞きます。また、かむ刺激が骨に伝わることで、さらに骨を強くします。こういったことの基礎的なメカニズムが現在、研究されています。


治療・予防 〜全身の健康維持に正しいケアを

 多くの患者さんは「食べることが一番の楽しみ」と言われます。おいしく上手に食べることを損なうのが歯周病。それを予防・改善することは、全身の健康維持にとって大事なことなのです。

◎治療

 歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットの深さを測り、またその際の出血の程度などから判定した進行度によって治療は変わります。

 初期から中等度であれば、歯周ポケットの中の歯石を取り、歯ぐきを引き締めていきます。ポケットが5、6ミリと深くなっている場合、少しずつ引き締めながら、治療を進めます。同時に日々のケアを指導します。

 重症の場合は、歯ぐきを切開し、汚染物を取り除きます。

◎予防

 日々の歯磨きで、歯と歯ぐきの間に毛先を当てるようなブラッシングをすることが大事です。

 また、歯科医院で染め出してもらい、自分の歯磨きの癖やブラシが届いていない箇所を確認し、電動ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなど、自分に合った清掃具とその使い方を指導してもらいましょう。

 歯科医院で定期的にチェックを受け、歯垢や歯石を取り除くことも忘れずに。半年に1回が目安ですが、歯石が付きやすいなら、3カ月に1回くらいの頻度がいいかもしれません。


【メモ】DNAの型で細菌が分かる!?

 体の中にはさまざまな場所にいろんな細菌がいます。増えると肺炎やがんになりやすい菌も分かってきています。

 糖尿病患者の調査では、入院下の治療で血糖値がうまくコントロールできると、口の中の細菌のバランスが良い方向に変化するというデータがあります。

 現代では、以前のように菌を培養しなくてもDNAの型を調べることで菌の種類を知ることができます。ですから唾液や歯垢に含まれている菌のDNAを調べれば、口の中にどんな菌が住んでいるのか分かるのです。

 こういったデータを集積し、歯科で「この菌が多いからこの病気の危険性がある」などと伝えることができる将来を目指し、大学での研究を展開しています。

 ヒトのDNAは個人情報だけに取り扱いに注意が必要ですが、細菌のDNAさえも健康管理に役立てられる可能性が大きいものです。


【終わりに】

 歯周病の最大の危険因子は喫煙です。糖尿病やアルコール、肥満もそうです。また、多くの薬を服用している人の中には、副作用のドライマウス(口腔内乾燥)に悩む人がいますが、これも歯周病を起こしやすくします。

 そういった情報を知り、自らコントロールできることはし、専門的なケアを定期的に受けることで、予防・改善してください。


話を聞いたのは
熊本大学医学部附属病院歯科口腔外科
中山 秀樹 教授 

歯科医師・歯学博士
・日本口腔外科学会専門医・指導医
・日本がん治療認定医機構暫定教育医・
がん治療認定医(歯科口腔外科)