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「あれんじ」 2015年2月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第43回】コミュニケーション

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第43回】

【第43回】コミュニケーション
熊本赤十字病院
血液・腫瘍内科
医師 釆田(うねだ) 志麻

「お寒い中、お待たせして申し訳ありません」。年末の夜、バスの停留所で声がします。ほぼ定刻通りだし、運転手さんが悪いわけでもないのに「申し訳ありません」です。

 気になって、車内放送が入るたびにチェックしていました。とても優しい声のトーンや丁寧な言葉遣いから、凍えるような冬の夜に満員バスに揺られる乗客への心遣いを強く感じて、ポカポカした心持ちになりました。

 病院でも、例えば看護師や医師と話す時に、言葉遣いや声の調子・表情などで不安になったり、ホッとしたりすることがあると思います。特にがんの患者さんは、病気のことを知って治療をきちんと受けなくてはと思っても、そもそも病名を聞いただけで頭が真っ白になり、何も覚えられないということもあるでしょう。

 日本サイコオンコロジー学会主催・緩和医療学会共催の研修会に、がん医療に携わる医師のための「コミュニケーションスキル」があります。それは、病気や治療、生活のことを説明し、話し合うとき、患者さんの不安やストレスをできるだけ軽くし、前向きに考えられるように医師が身につけるべきとされています。

 そもそも会話が苦手な私も、ご縁があってこの研修に関わるようになりました。医療者が「患者さんの心情を優先した」聴き方や話し方を身につけることは、がんだけでなく医療全般に必要なことです。一生懸命頑張ってはいますが、まだまだ勉強不足です。

 冒頭の運転手さんだけでなく、職場や街の中のいろんな方から「思いやりの伝え方」を教えていただいています。