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【四季の風】第28回 山眠る
迂闊(うかつ)にも眠りし山もあるならん 岩岡中正 さらに、この冬山は春になると目覚めて、笑いだす。俳句で「山笑う」といえば、春の山のこと。草木が薄々と緑に色づき鳥獣も人も動き始めて山ににぎわいが戻ると、これを「山笑う」と言う。それがなつかしい故郷の山であってみれば、いっそう心浮き立つものがある。 故郷やどちらを見ても山笑ふ 正岡子規 ついでに言えば、春の笑う山に対して、秋の山は「粧う」。つまり、紅葉などの彩りを帯びて秋の山が美しくなることを、俳句では「山粧(よそお)う」と言う。 山粧ふけものの道もくれなゐに 檜(ひのき) 紀代 山も、人間みたいに眠ったり笑ったり粧ったりと忙しい。ただ、ときに昨年の御嶽山や阿蘇中岳のように目覚めて敵意を見せることもある。