【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
多世代、多文化との交流がカギ コミュニケーションの磨き方
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第27回のテーマは「コミュニケーション」。さあ「なるほど!」の旅をご一緒に…。 【はじめの一歩】 他人とコミュニケーションのできない若者が増えているとよく聞きますが、今の大学生もそうなのでしょうか。そもそもコミュニケーションについて学ぶとはどういうことなのか、次々に湧いてくる疑問に対する答えを探すために、水元豊文教授の研究室を訪ねました。 |
読書嫌いはコミュニケーション下手? |
「しゃべることが苦手な学生が多いですね。同級生同士なら話せるのに、一学年でも違うとコミュニケーションがしづらくなる。その理由に興味があります」と、熊本大学文学部コミュニケーション情報学科の水元教授は語ります。今は携帯電話やメールで、打ち解ける相手を選べる時代。話したくない相手とは話さなくても済むという環境が、コミュニケーション下手を作っているとも言えるでしょう。 |
音読の効用 |
水元教授は最近、授業で学生たちに論文を音読させていると言います。「声を出して言葉を音にするという基本的な訓練が、日本の教育から少なくなってきています。声を出す授業がないので、声が出ていない。だから相手に声が届かないんです」。高校までは部活などで声を出していても、大学では授業を聞くだけでレポートを書けばいいから声を出さなくて済むのです。 |
授業に組み込んだイベントでコミュニケーションを学ぶ |
「うちの研究室には3年生から大学院生までいろんな学生が入り混じって来ますが、その様子を見ていて分かるのは、コミュニケーションのテクニックを教えるよりも、場や空間を作ってあげた方が自然に会話できるようになるということです」。水元教授は、学生たちができるだけ多世代の人たちと交流する機会を作ろうと、さまざまなイベントを授業に組み込んでいます。 |
相手に関心を持ち、好奇心と想像力を働かせよ |
コミュニケーション技法を学ぶ一環として、就職支援のための面接の練習も行われます。しかし、学生たちの多くは相手が自分の背景を知っているという前提でしゃべるので、どうしても説明不足になりがちだと言います。そこで水元教授は、相手が自分のことを何も知らないという前提で、自分をどこまでアピールできるかを訓練しています。そして、相手企業のことをよく知っておくことも大事な要素。「就活とは、会社研究テストである」と学生たちには話しているそうです。 |
【なるほど!】 |
10年前に、慶応大学から熊本大学に来た水元教授は、ずっと上乃裏通りに住んで歩いて通勤されているそうです。「道はジグザグに歩いたほうが魅力的。迷えば迷うほど面白い」と、いろんな通勤ルートを発見しては楽しんでおられると聞いて、この好奇心こそがコミュニケーションの極意だと納得しました。 |
【メモ1】研究室のモットーは「和顔愛語」 |
仏教用語に「和顔愛語(わがんあいご)」という言葉があります。「大無量寿経」の中の言葉で、なごやかな笑顔と思いやりのある言葉で人に接することを表しています。水元教授の研究室には、この言葉が書かれており、ゼミの学生たちにも「和顔愛語」を意識させているそうです。 |
【メモ2】ゼミの学生さんに聞きました |
◎西村憲治さん(3年生) |
ナビゲーターは |
熊本大学文学部
コミュニケーション情報学科 水元豊文教授 自分ではなく、相手を中心に考えて、好奇心と想像力を働かせればコミュニケーションは成り立ちます。 |