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「あれんじ」 2014年11月1日号

【専門医が書く 元気!の処方箋】
男性に多い!高尿酸血症・痛風

 「風が吹いても痛いから痛風」といったことは聞いたことがあるものの、痛風がどんな病気かきちんとは知らない人も多いのではないでしょうか。今回は痛風と、痛風を引き起こす高尿酸血症についてお伝えします。

はじめに

 食生活の欧米化に伴い、年々増加傾向にある高尿酸血症。成人男性の20〜25%ほどの患者がいるとされています。高尿酸血症はそれだけでは自覚症状もないため軽く見られがちです。しかし放置しておくと、痛風だけではなく腎障害や腎結石、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化症の原因となる重大な病気の一つです。


高尿酸血症とは

 ヒトの細胞のなかには、たくさんの遺伝子が存在します。この遺伝子のもととなる核酸という物質のなかに含まれるプリン体の分解産物が尿酸です。体のなかでつくられた尿酸のほとんどは腎臓から尿として排泄されますが、この尿酸の排泄量が少なくなったり、体のなかで尿酸が過剰にできてしまうと、血液中に尿酸が増えてきます。このように、血液中の尿酸が正常値以上に高くなった状態を高尿酸血症と言います。

 日本痛風・核酸代謝学会が発表している「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では、血液中の尿酸値の上限を7.0mg/dlとし、これを超えるものを高尿酸血症と定義しています。ちなみ尿酸値は食事の影響を受けませんので、採血検査は食前食後を問いません。


高尿酸血症の原因

 高尿酸血症は、体内の尿酸産生が増加することによる産生過剰型と、腎臓からの尿酸の排泄が減少することによる排泄低下型、またこれらが混在する混合型に分類されます。さらに、尿酸の代謝異常が主なる原因である原発性と、糖尿病や腎不全、白血病などの別の病気や薬剤治療などによって二次的に高尿酸血症となる続発性に区別されています。

 実際は原発性の高尿酸血症がそのほとんどですが、一部を除いてその原因はよく分かっていません。

 痛風は昔、「帝王病」ともいわれていたように、美食、大酒の習慣を持つ上流階級の病気と考えられていました。しかし現在では、欧米化した食習慣、あるいはアルコール摂取量の増加により、誰もが高尿酸血症や痛風になる可能性を持っています。実際にカロリーの高い食事摂取やその結果起こる肥満は、尿酸の産生量を増加させることが知られています。さらに、アルコールや果物の過剰摂取、ストレス、過度の運動も尿酸値を上げるといわれています。


痛風とは

 高尿酸血症の状態があるあいだ持続すると、尿酸は尿酸塩という結晶の形になり、関節や組織などに沈着してくるようになります。このように慢性的な高尿酸血症の結果、結晶化した尿酸塩が関節に沈着することにより急性の関節炎を引き起こす病気が痛風です。

 痛風は、日本では第二次世界大戦以前は極めてまれな病気でしたが、1960年以降になると急激に増え、2004年の国民生活基礎調査では、全国で約87万人が痛風で通院していました。これは1995年の約2倍です。

 痛風は40〜50代の男性に多く、患者の95%以上は男性で占められています。

 女性は男性に比べて極めて少なく、発症する場合はほとんどが閉経期以降といわれています。その理由としては、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンに、腎臓からの尿酸排泄を促進するはたらきがあり、閉経期以降、このホルモンの分泌が低下することで尿酸の排泄量が低下し、血液中に尿酸がたまる傾向になるためと考えられています。

 痛風発作は、アルコール摂取過多やストレスなどが引き金となって生じる場合があります。発作時には、手足の関節が腫れ、熱感を伴う激しい痛みが起こります。症状は24時間でピークに達し、無治療でも1〜2週間で自然に回復していきます。しかし、無治療のままこのような症状を繰り返すと、関節の周りなどに、痛風結節という尿酸塩の結晶がたまったこぶのようなものができることがあります。


高尿酸血症と臓器障害

 痛風にみられる尿酸塩の沈着は、腎臓の髄質にも起こることがあり、そうなると腎機能に障害が現れます。この状態を痛風腎といいます。さらに、尿酸塩を主体とした尿路結石もできやすくなります。また、高尿酸血症は狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、あるいは脳梗塞などの脳血管疾患の危険因子のひとつとされています。高尿酸血症は肥満者に多いこともあり、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを合併することも多く、その結果、重い脳血管障害や心臓病を併発してくる恐れもあります。


高尿酸血症・痛風の治療

 高尿酸血症の治療の大原則は生活習慣の改善です(図1)。まずは適切な食事摂取量への変更と適度な運動による肥満の是正が求められます。また、尿酸産生のもととなるプリン体を多く含む食品の摂取を控えることも大切です(図2)。さらに、脳血管障害や心臓病などの合併症を防ぐために、塩分制限や、魚などに多いω脂肪酸など良質な脂肪分への変更も必要になります。

 尿酸値を下げる薬には、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット)と尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロンなど)があります。一般的に、前述したような体のなかでの尿酸産生が高まった患者さんは尿酸生成抑制薬を、尿酸排泄量が低下した患者さんは尿酸排泄促進薬を服用します。しかし、以前尿路結石を起こしたことのある人や腎機能が低下した人は、尿酸排泄促進薬によりこれらの合併症を悪化させる危険があるため、尿酸生成抑制薬の服用が適切な場合があります。

 一方、痛風腎や尿路結石の予防には尿量を増やすことが大切です。そのため日頃から飲水量を増やし、1日尿量を2000ml以上に保つようにする必要があります。また、痛風の患者さんの尿は酸性度が強いため、尿をアルカリ化する野菜や海藻などを多く取るようにします(図3)。食事療法によっても酸性尿の是正が不十分な場合は、重曹やクエン酸製剤などの尿アルカリ化薬を服用することもあります。

 痛風の治療では薬物療法が中心となります。痛風発作の前兆期、つまり発作の予兆を感じた時はコルヒチンを用います。発作が本格的に起こった後は、非ステロイド性抗炎症薬を短期間だけ比較的大量に用います。また、抗炎症効果の強い副腎皮質ステロイド薬も、場合によっては用いることがあります。




熊本大学大学院 生命科学研究部 代謝内科学分野
荒木 栄一教授

・日本内科学会認定指導医 
・日本糖尿病学会認定研修指導医
・日本内分泌学会認定指導医 
・日本老年医学会認定指導医


熊本大学医学部附属病院 代謝・内分泌内科 松村 剛講師

・日本内科学会認定指導医 
・日本糖尿病学会認定専門医 
・日本動脈硬化学会専門医