【専門医が書く 元気!の処方箋】
男性に多い!高尿酸血症・痛風
「風が吹いても痛いから痛風」といったことは聞いたことがあるものの、痛風がどんな病気かきちんとは知らない人も多いのではないでしょうか。今回は痛風と、痛風を引き起こす高尿酸血症についてお伝えします。 |
はじめに |
食生活の欧米化に伴い、年々増加傾向にある高尿酸血症。成人男性の20〜25%ほどの患者がいるとされています。高尿酸血症はそれだけでは自覚症状もないため軽く見られがちです。しかし放置しておくと、痛風だけではなく腎障害や腎結石、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化症の原因となる重大な病気の一つです。 |
高尿酸血症とは |
ヒトの細胞のなかには、たくさんの遺伝子が存在します。この遺伝子のもととなる核酸という物質のなかに含まれるプリン体の分解産物が尿酸です。体のなかでつくられた尿酸のほとんどは腎臓から尿として排泄されますが、この尿酸の排泄量が少なくなったり、体のなかで尿酸が過剰にできてしまうと、血液中に尿酸が増えてきます。このように、血液中の尿酸が正常値以上に高くなった状態を高尿酸血症と言います。 |
高尿酸血症の原因 |
高尿酸血症は、体内の尿酸産生が増加することによる産生過剰型と、腎臓からの尿酸の排泄が減少することによる排泄低下型、またこれらが混在する混合型に分類されます。さらに、尿酸の代謝異常が主なる原因である原発性と、糖尿病や腎不全、白血病などの別の病気や薬剤治療などによって二次的に高尿酸血症となる続発性に区別されています。 |
痛風とは |
高尿酸血症の状態があるあいだ持続すると、尿酸は尿酸塩という結晶の形になり、関節や組織などに沈着してくるようになります。このように慢性的な高尿酸血症の結果、結晶化した尿酸塩が関節に沈着することにより急性の関節炎を引き起こす病気が痛風です。 |
高尿酸血症と臓器障害 |
痛風にみられる尿酸塩の沈着は、腎臓の髄質にも起こることがあり、そうなると腎機能に障害が現れます。この状態を痛風腎といいます。さらに、尿酸塩を主体とした尿路結石もできやすくなります。また、高尿酸血症は狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、あるいは脳梗塞などの脳血管疾患の危険因子のひとつとされています。高尿酸血症は肥満者に多いこともあり、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを合併することも多く、その結果、重い脳血管障害や心臓病を併発してくる恐れもあります。 |
高尿酸血症・痛風の治療 |
高尿酸血症の治療の大原則は生活習慣の改善です(図1)。まずは適切な食事摂取量への変更と適度な運動による肥満の是正が求められます。また、尿酸産生のもととなるプリン体を多く含む食品の摂取を控えることも大切です(図2)。さらに、脳血管障害や心臓病などの合併症を防ぐために、塩分制限や、魚などに多いω脂肪酸など良質な脂肪分への変更も必要になります。 |
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熊本大学大学院 生命科学研究部 代謝内科学分野
荒木 栄一教授 ・日本内科学会認定指導医 ・日本糖尿病学会認定研修指導医 ・日本内分泌学会認定指導医 ・日本老年医学会認定指導医 |
熊本大学医学部附属病院 代謝・内分泌内科 松村 剛講師
・日本内科学会認定指導医 ・日本糖尿病学会認定専門医 ・日本動脈硬化学会専門医 |