【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
あなたの近くにも新種が!? 「シダ植物」のフシギ
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第3回のテーマは「シダ植物」。さあ、「なるほど!」の旅をご一緒に…。 |
【はじめの1歩】 |
「シダ植物」と聞いてまず思い浮かぶのは、正月の注連(しめ)飾りに使うウラジロでしょうか。でも、よく考えてみると、ツクシやワラビ、ゼンマイ、コゴミなどの山菜もシダ植物。観葉植物の多くもシダの仲間です。身近なのに謎がいっぱいありそうで、一歩を踏み出す前からワクワクしてきました。 |
Point1 「種(しゅ)」ってなに? |
「種について説明するのは大変難しいんです。生物学的にきちんと定義されていないんですよ」と、熊本大学大学院自然科学研究科の宮正之教授は語ります。いろんな定義があるのに例外が多すぎるため、誰もが納得できるすっきりした定義付けができないのです。そこが、生物多様性のなせるわざなのでしょう。 |
【ハテナ?1】 シダって、どんな植物? |
通常、私たちが目にするシダは葉の部分です。茎のように見えるのは葉柄で、茎は根茎として地表近く、あるいは地下にあります。ワラビも地上に出ているのは葉の部分。地下の根茎は1ヘクタールほども広がっている場合があり、葉であるワラビは性質も同じなので同じ温度条件で一斉に生えてくるのです。 |
Point2 シダ植物の多様性 |
見た目も遺伝的にもはっきりと分かる種を「良種」、見た目が似ているので同種と思われていたのが、よく調べてみると遺伝的、生態的に違う種を「隠蔽種」とか「同胞種」といいます。最近の動物の例でいくと、1種とされていたアフリカゾウにサバンナ型と森林型の2型があることが分かり、インドゾウも含めてゾウは3隠蔽種に分かれたという報告がありました。 |
【ハテナ?2】 シダ植物にはどんな仲間がいるの? |
バンクーバー冬季五輪の表彰式で、勝者に渡されるオリンピックブーケにもシダ植物が使われていましたね。 |
【ハテナ?3】 「学名」とは? |
存在が知られている生物には、世界共通の名前である「学名」が付けられています。「二名法」といって、姓名に当たる属名と種小名がラテン語で表記されます。この方法は、分類学の父といわれるスウェーデンの博物学者、リンネによって体系化されました。 |
Point3 絶滅危惧種を救え |
現在、学名がつけられて認知されている生物は、地球上で約150万種です。知られていないものも含めると、数千万から1億種はあるのではないかといわれています。認知されている生物のうち半数の約85万種が、昆虫などの節足動物です。次に多いのが植物の約26万2000種。植物の中で一番多いのは、花の咲く被子植物で約23万種もあります。シダ植物は約1万種が知られています。 |
【ハテナ?4】 同じ学名の生物がいるってホント? |
生物学の世界には、「国際植物命名規約」「国際動物命名規約」「国際細菌命名規約」などの「六法全書」に当たる命名規約が5つほどあり、それぞれの内容は微妙に違います。例えば、トキの学名ニッポニア・ニッポン(Nipponia nippon)は、「日本」という言葉が反復して使われていますが、植物の学名にはこのような反復名を用いることはできません。 |
【なるほど!】 |
多種多様なシダ植物には驚かされますね。土壌を浄化するシダがあるくらいですから、がんの特効薬になるような未知のシダも、これから発見されるかもしれません。知らないうちに絶滅されてはかないません。少しでも多くの新種の発見めざして、宮先生ガンバレ! |
熊本大学大学院自然科学研究科
(理学専攻)生命科学講座 宮 正之教授 シダ植物の生態、形態、生殖様式、染色体、遺伝子を調べて、 |