【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
建築の歴史を探る フィールドワークの面白さ
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第26回のテーマは建築史。さあ「なるほど!」の旅をご一緒に…。 【はじめの一歩】 建築史、それも西洋の古代建築の研究と聞いて、ギリシアやローマの神殿や競技場を思い浮かべました。日本での古墳や神社仏閣と同じように、西洋にとっての神殿や教会などは、建築史に重要な位置を占める存在だと思います。「考古学」との境界線はどこにあるのか、興味は尽きません。 |
「地中海建築」とは? |
「現存する建物の中で歴史上最高峰のものは、ギリシアのパルテノン神殿です」と言い切る、熊本大学大学院自然科学研究科の伊藤重剛教授。「古代遺跡を発掘するのが考古学者で、出土した建造物を研究するのが建築史学者です」 |
ギリシア建築の精巧な技術 |
ギリシア建築の魅力は、その精度にあると言います。ギリシア人は、太い柱の上にがっちりとした梁をかける技術を洗練させていきました。その頂点に立つのがパルテノン神殿です。「中世のゴシック建築が素晴らしいと言いますが、ギリシア建築に比べると精度が違います。ギリシア人はミリ単位で造っているんです」と伊藤教授。 |
ギリシアの建築家が残した設計図 |
ギリシア語で建築家を「アーキテクトン」と言います。このアーキテクトンは紀元前6世紀ごろから存在していましたが、最初は大規模農場を経営する資産家などが、必要に応じて大工の棟梁みたいな役割を兼任するというものでした。それが職業として成り立つようになったのは、紀元前2世紀ごろからです。 |
伊藤隊の調査研究の足跡 |
平成6年から3年間、伊藤教授は「デルフィの神託」で知られるデルフィのアテナ・プロナイア神域でトロス(円形建築)、マッシリア人の宝庫、ドリス式宝庫の3棟の大理石造建築の実測調査を行いました。発掘したフランス隊から概略の報告書は出ていましたが、伊藤隊の再調査で1ミリ単位の精巧な仕事をしていたことが分かりました。造られたのは紀元前4世紀、パルテノン神殿より少し遅い時代です。 |
(写真1)家型墓。4・5m角で上部の屋根は反りのついた円すい形。ほとんどの部材が残っていたため復元できた
|
(写真2)陸上競技場(スタディオン)。オリンピアでの競技と同様、メッセネでも競走をして速さを競った。発掘後、綺麗に整備された
|
メッセネのアスクレピオス神域。左が神殿で回廊で囲まれていた。後方はアクロポリス
|
アスクレピオス神域調査のときの隊員との記念写真。中央が伊藤教授
|
【メモ1】ローマ建築は「コンクリート」造り!? |
ナビゲーターは |
熊本大学大学院自然科学研究科
建築学専攻 伊藤重剛教授 フィールドでの調査は、楽しくないと長続きしません。朝は6時起床と早いんですが、三食昼寝付きです。 |