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「あれんじ」 2014年6月7日号

【専門医が書く 元気!の処方箋】
増えるコンタクトレンズ眼障害 あなたは正しく装用、ケアしていますか?

 視力の矯正に便利で快適なコンタクトレンズ。装用する人の増加に伴い、その使用に原因があると考えられる眼障害が増えています。

 そこで、快適に「見える」生活を続けるために大事な注意点や気を付けたい疾患などをお伝えします。

多様になったコンタクトレンズ

はじめに

 コンタクトレンズ(CL)を素材で分けると、材質が硬質なハードコンタクトレンズ(HCL)と、水分を含み軟らかくなるソフトコンタクトレンズ(SCL)があります。

 1991年に使い捨てのSCLが発売され、利用者が急増。国民の10人に1人がCLを装用していると推測されています。


素材、交換サイクルなど自分に合ったものを選んで

 装用者の増加に伴い、不適切な使用方法やケアなどが原因となる「コンタクトレンズ(CL)眼障害」が増えています。

 くまもと森都総合病院の松本光希眼科部長は、「CL装用者の10人に1人くらいの割合で生じており、時には重篤な症状になり、視力の回復が難しいこともあります」と警鐘を鳴らします。

 その背景には、「比較的ケア方法が簡単なCLの登場によって、CLが医療機器であるという認識が薄まっているのでは」と松本部長。メモ1、2のように、素材や交換サイクルが異なるそれぞれの特徴を知って、自分に最も合うものを選ぶところからスタートする必要があるようです。


CLは医療機器です 正しい知識や使い方を

酸素不足や汚れに注意 感染や障害の原因に

 CLを装用している目にはどんなことが起きているのでしょうか。

 「角膜は空気中の酸素を取り入れて呼吸しています。CLによって角膜の表面が覆われると、角膜は酸素不足に陥ります。酸素不足の角膜は傷つきやすく、感染症を起こしやすくなり、最終的には眼障害を引き起こす危険性があります」と松本部長。

 「含水率(CLの総重量に対する水の重量割合)が60%以上の高含水性SCLは酸素透過性が良好です。一方、従来型低含水性SCL、カラーSCLは酸素透過性がよくありません。しかしいずれにしても、装用しない人より酸素不足になりやすいのです。さらに、長時間や睡眠時など不適切な装用によって、その度合いは増します」と、注意を促します。

 眼障害の原因は、長時間装用による酸素不足以外に、感染、レンズの汚れ、機械的な刺激、アレルギー、ドライアイなどがあります。それは、装用時間や洗浄不良などレンズの使用方法に問題がある場合(図1)、レンズの汚れやキズなどCL自体に問題がある場合(図2)、定期検査などのフォローアップや説明指導が不適切な場合など処方やケアに問題がある場合(図3)があります。

 CLを装用している目がどういう状態かを認識し、使用方法やケアを誤らないようしたいものです。


菌や原虫による角膜炎 角膜移植が必要になることも

 CLで目が痛いと訴える人の多くに見られるのが、緑膿菌による感染性角膜炎です。「重篤な合併症である角膜潰瘍は、すりガラスのように白く濁ります。治っても角膜の混濁による著しい視力障害や不正乱視が残り、角膜移植が必要になることも」(図4)。角膜が薄くなりすぎて移植が困難な場合もあるそうです。

 そのほかセラチア菌感染性角膜炎やアカントアメーバ角膜炎があります。アカントアメーバという原虫による角膜炎は初期診断が難しく、重篤になる場合が多いと言います。「円盤状の潰瘍を作り、すごく痛いのが特徴。レンズケースの中が汚いと、緑膿菌が増え、中にアメーバが入ってくると、緑膿菌を餌にしてアメーバが増えていきます」

 保存液やレンズケース内での増殖、汚染を防ぐには、従来からの煮沸消毒法が有用です。現在は簡便な化学消毒法が主流となっていることが、CL装着者の角膜炎が増加している大きな要因です。「特に、一液で洗浄、すすぎ、消毒、保存を行う多目的溶剤は、こすり洗いをしないと薬剤の消毒効果が非常に低いのです」。


大事な処方、説明指導 定期検査も怠らないで

 CL眼障害は「不適切な処方や装用方法、レンズケアの指導をきちんと受けてない、定期的なチェックを受けていないことが大きな問題」だと松本部長。

 自分の目に合った適切なレンズを選ぶためには診察が必要です。CLの処方は医師であれば眼科医以外でも法律上は可能ですが、眼科の基本的な知識は必須です。眼科専門医のいる眼科診療所や病院でCLの処方を受けることが大事だといえます。

 また、レンズケアとともにレンズケースの洗浄、乾燥も重要です。取り扱い時の手洗いは言うまでもありません。しかし、「装用方法やレンズケアの指導を受けても、それを守らなければ意味がありません。その上、CL眼障害を起こした人の約3割はまったく定期検査を受けていないという調査データもあります」(松本部長)。

 CLは適正な管理が必要な「高度管理医療機器」です。きちんと説明を受け正しい使用と管理を心がけ、3カ月に1回は定期検査を受けましょう。


メモ

【メモ1】

コンタクトレンズの種類(材質)

◎ハードコンタクトレンズ (HCL) 
・異物感を生じやすい
・はずれやすい
・障害の初期に痛くなるため重篤な角膜障害を生じにくい
・角膜の乱視矯正によい

◎ソフトコンタクトレンズ(SCL)
・装用感がよい
・角膜障害に気付きにくい
・汚れやすい
・角膜の乱視矯正が低い
・耐久性に劣る


【メモ2】

コンタクトレンズの種類(使用期間別)
◎従来型CL
ハードCLは2〜3年間使用、ソフトCLは1〜2年使用

◎1週間使い捨てSCL
最長1週間を限度に連続装用で使用。一度外したレンズは再使用しない

◎2週間頻回交換SCL
最長2週間を限度に毎日出し入れ使用するが、それ以上は再使用しない

◎定期交換SCL
最長2週間を限度に毎日出し入れ使用するが、それ以上は再使用しない


【メモ3】

カラーコンタクトの危険性

 若い世代に人気の「カラコン」ことカラーSCLは、色素がレンズにプリントされているため、その部分の酸素透過性が低下。また、度の入っていないおしゃれ目的のカラーSCLはレンズの製法が粗く、色素が漏れることもあるそう。

 「目に障害を与える危険性を知っていてほしい」(松本部長)


【図1】
眼障害の原因(使用方法)


【図2】
眼障害の原因
(コンタクトレンズ自体)


【図3】
眼障害の原因(処方・ケア)

図1〜図3 (C)Japanese Ophthalmological Society(平成14年度社団法人日本眼科医会CL眼障害アンケート調査より)


【図4】
緑膿菌による角膜潰瘍


話を聞いたのは
くまもと森都総合病院
松本光希 外科診療部長 兼 眼科部長

医学博士。熊本大学医学部医学科臨床教授。
同院で、角膜移植、角膜疾患、眼感染症、眼瞼結膜疾患、白内障手術、涙道手術などを担当。
日本眼科学会認定指導医・専門医
日本眼感染症学会会員
日本眼炎症学会会員
日本角膜学会会員
身体障がい者福祉法指定医