【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
民事訴訟法で問題解決能力を身に付けよう
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第24回のテーマは「民事訴訟法」。さあ「なるほど!」の旅をご一緒に…。 |
はじめの一歩 |
「民事訴訟法」と聞いただけで、難しそう…という先入観がよぎります。でも一方では、それを研究対象にしている研究者がいるという事実から、本当はとても面白いジャンルなのかもしれないという期待感も湧いてきます。裁判員制度も導入されたことだし、少しは法律にも詳しくならなければと思いつつ、研究室を訪ねました。 |
【Point 1】「民事訴訟法」とは? |
法律は抽象的な表現で書かれています。これは仕方のないことでもあります。例えば私的なもめごと(紛争)だけでも、金銭トラブルや土地問題、離婚問題などさまざまなことが起こります。このような社会で起こるすべての問題について、個別的な規定を定めるのは不可能ですから、法律は抽象的な表現にならざるを得ないのです。 |
【Point 2】「現代型訴訟」の出現 |
裁判の原告(訴える側)と被告(訴えられる側)をまとめて「当事者」と言います。当事者が裁判の中で行わなければならない行為(訴訟活動)は民事訴訟法で定められています。また民事訴訟法には、「弁論主義」や「主張・証明責任」という原則があります。 |
【Point 3】敵に塩を送る義務?「事案解明義務論」 |
公害訴訟では、原告は被害者、被告は国や公害を起こした大企業という場合がほとんどです。この場合、専門知識や証拠になる材料の多くを被告が持っており、弁論主義と主張・証明責任の原則をこれに当てはめると、原告は圧倒的に不利になってしまいます。公平であるべき裁判で不公平が生じたら由々しきことです。そこで、当事者間のアンバランスを解消する必要が出てきます。そのためにはどうすればよいのでしょうか。 |
【Point 4】「法的観点指摘義務」の存在 |
事案解明義務の法的根拠については、これまでに多くの先行研究がなされてきました。一例として、情報や証拠がないままの裁判は、憲法32条で定められている「裁判を受ける権利」の侵害に当たるというものがあります。しかし憲法を根拠にすると、憲法の解釈に関する事柄は最高裁での審理を求めることが可能になるため(実は民事裁判の場合、一般的にどんな事件でも必ず最高裁まで争うことができるわけではないのです)、どの事案も必ず最高裁まで争うことができるということになってしまい、最高裁の負担が増し、本来最高裁で審理されるべき事件の審理の妨げにもなることが想定されるため、非現実的です。この意味で、憲法を根拠にするのは難しいのです。 |
【なるほど!】 |
Mア先生のお話を聞いていると、法律というものが時代を経るにつれて弱者寄りになってきている気がします。人間のすることに完璧はないのでしょうが、「より公平に公正に、紛争が解決されていけばいいな」と思います。ほんの少しですが、民事訴訟法が身近になりました。 |
【メモ1】弁護士を立てなくても、民事裁判ってできるの? |
裁判といえば弁護士を立てなければいけないというイメージがありますが、簡易裁判所や地方裁判所では「本人訴訟」と言って、弁護士を立てないことも多いのです。 |
【メモ2】裁判官はなぜ黒い法服を着ているの? |
裁判官が身に着ける法服の色は、戦前の大審院(最上級裁判所)時代から黒色とされてきました。人を公正に裁くべき者の職責の厳しさを象徴するものとして、着用が義務付けられています。 |
【裁判官についての豆知識】 |
◎裁判官の個人情報は保護され、秘密が守られています。だから、名刺にも連絡先は書かれていません。電話帳にも電話番号は載りません。 |
ナビゲーターは |
熊本大学法学部
Mア録准教授 リーガルマインド(法的思考)は一般社会でも役立つツールです |