【専門医に聞く 元気!の処方箋】
「ヒマン」のヒミツ 〜神様は“肥満”を想定していなかった!?〜
活動的な春が来ました。「あれもしたい、これもしたい」と新たな計画に心弾みますが、あなたの体、重くなってはいませんか? 肥満が原因の一つとなる多くの生活習慣病を防ぎ、よりイキイキと暮らせるように、「元気!の処方箋」の第1回は「ヒマンのヒミツ」に迫ります。 |
糖尿病患者が年70万人ずつふえる時代に |
「人間を作った神様が想定しなかったことの一つが、肥満(※1)ではないでしょうか」。熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野の荒木栄一教授によると、「肥満は、長い人間の歴史の中で、例えば日本ではここ数十年に起きてきたこと」。飢餓との戦いだった人の歴史は、体にできるだけ“蓄える”仕組みを生かして、生き残ってきたわけです。それが、こんなに食べ物が豊富にあり、消費するエネルギー以上に食べ過ぎるという行為が起きるようになって生まれた産物が「肥満」というわけです。 |
驚き!!脂肪細胞から”食欲を抑える”ホルモンが!? |
ここで、「ヒマンのヒミツ」にかかわる脂肪細胞に目を向けます。「余分なエネルギーを蓄え、クッション機能で大事なものを守る」という働きをしていると考えられていた脂肪細胞が、実はホルモンを出し、積極的に代謝にかかわっている組織だということが、15年ほど前に分かってきました。「脂肪細胞からだけ分泌されるレプチンというホルモンは、大きい脂肪細胞からはたくさん出て、小さい脂肪細胞からはあまり出ません。レプチンがたくさん出るようになると、『もうこれ以上取る必要はありませんよ』という指令を出して、食欲を抑えるのです」 |
「働く→基礎代謝アップ→太りにくい体」に |
しかし、今のところは、自分で食欲をコントロールし、肥満にならないように注意しなければなりません。よく「水を飲んでも太る」と言う人がいますが、そういう体質はあるのでしょうか。 「エネルギー消費に関するいくつかの遺伝子の違い(個性)によって、エネルギーを消費しにくい人もいれば、しやすい人もいるということは分かっています」と荒木教授。しかし、「消費エネルギーより多く食べなければ太りません」。―ということで、「水を飲んでも太る」ことはないハズなのです。 |
子ども時代の食生活が好みを決める |
年間に70万人ずつ増えているという糖尿病。肥満はその大きな要因です。荒木教授は、毎年それだけ多くの人が病気になっている問題の大きさとともに、以前は50歳代、60歳代で発症することが多かった糖尿病が、今は30歳代で発症する人もいるという「発症の若年化」の問題を指摘します。これは幼い頃からの食生活やそれによって定まった嗜好によって累積された体の負担が、糖尿病の発症につながっているのではないかといいます。 |
熊本大学大学院生命科学研究部
代謝内科学分野 荒木 栄一教授 内科指導医・内科認定医、糖尿病研修指導医・糖尿病専門医、内分泌代謝科指導医・内分泌代謝科専門医、老年医学会指導医 |