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「あれんじ」 2014年1月11日号

【四季の風】
第24回 初づくし

 年が明けて、心も新たになりました。このちょっとした心の張りが、私は大好きです。
 俳句は季節の詩ですので、この新年の「初」にはとても敏感で、たくさんの季語があります。それこそ、本を読む「読初(よみぞめ)」、書をかく「書初(かきぞめ)」、お茶なら「初釜」や「初茶湯(はつちゃのゆ)」。次の句など、まるで熊本を詠(よ)んでもらったようで、うれしくなります。

名水の湧きてあふるる初茶の湯      山口青邨(せいそん)

 とくに私が好きなのは、その年に初めて農作業をする「農始(のうはじめ)」や「鍬始(くわはじめ)」、初めて山仕事をする「斧始(おのはじめ)」や「山始(やまはじめ)」です。田畑や野山に入って、田の神や山の神に米や餅や塩などのお供えをして、一年の仕事の無事を祈るのです。いかにも自然と調和して生きる謙虚さが、ここにあります。
 ただ、私自身は寒がりで無精で、炬燵(こたつ)の中にいながら、これらの野山の季語を想(おも)っては楽しんでいます。

鍬始浅間ヶ岳に雲かゝる       村上鬼城
切株に盛りある塩や斧始       江川三昧
裏山に返す谺(こだま)や山始     堤俳一佳

 最後に私自身の「初」といえば、この句。何だか決意だけは伝わってきます。

玲瓏(れいろう)の日が双肩に初詣  岩岡中正