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「あれんじ」 2013年11月2日号

【専門医が書く 元気!の処方箋】
「がんサロン」を知っていますか?〜仲間が集い、よりよく過ごすきっかけに〜

 がんは、全ての人にとって身近な病気です。がんの治療を終えたり、経過観察中や治療中の人たちが、体験談や情報交換などを通して交流を図る集まり「がんサロン」をご存じですか。
 今回は、「がんサロン」の概要や果たす役割などをお伝えします。

「がんサロン」ってどんなところ?

(1)誕生の経緯
発足時、約70人が集まる求められていた場所 今では22カ所に

 秋風が心地良い日の午前、熊本大学医学部附属病院の一室に一人、二人と集まってくる人たちがいます。この日は、月に1回の「熊本がんサロン」の活動日。予約や連絡などは必要なく、日によって参加者数はまちまちだそうですが、「このがんサロンには、いつも15人から20人くらい参加されます」と、世話人の堀田めぐみさん。
 「がんサロン」とは、がん患者仲間が集い、体験談などの対話を通して不安や孤独感などを緩和。よりよく過ごすきっかけをつかんだり、がん医療に関する情報交換を図ったりする集まりです。堀田さんは、「2010年4月にこの『熊本がんサロン』ができた時、70人くらいの方が集まられました。それだけ多くの人に求められていた場所だったのだと思います」と、当時を振り返ります。
 06年に国のがん対策基本法ができ、ピア(仲間同士による)カウンセリングの推進や、がん診療拠点病院がそれをサポートするなどの方向性が示された時期とタイミングが合ったこともあり、その後、県内に多くのがんサロンが誕生しました。「現在活動をしているがんサロンは22あります。少人数でゆっくり話せる環境も整い、また、自分の行きやすい場所、行ける日時などを選べるようになり、無理のない参加が可能になりました」。


(2)活動の様子

くつろいだ雰囲気の中で話題も自然に展開

 熊本がんサロンは毎回、「熊本がんサロンのルール」を、進行役の堀田さんが読み上げてスタートします。そこで得た個人情報やプライバシーに関する事柄について個人が特定されてしまう形で外部に公表しないことや、理由なく人の話を遮ったり、非難・批判をしないこと、「もっと食べて」「頑張って」などの励ましの言葉を使わないこと、など4つの項目を確認します。「参加した人が『来て良かった』『また来たい』と思う、安心して来られる場所にするために、ルールは大切」と堀田さんは話します。
 その後、くつろいだムードで参加者が近況を報告。日常の出来事や体調に関する心配事など、さまざまな話題が上ります。この日はその中から、自分のかかっている診療科が担当していない部位の不調の場合、主治医に相談すべきか、担当している診療科に直接受診した方がいいのかといった疑問や、3カ月に1回といった間隔の空く定期受診の合間に心配なことがあったらどうするか、などが自然と話し合われました。
 かかっている病院や診療科が異なる参加者それぞれの経験が話されると、「自分に合う方法はどれだろう」と、相談した人も周りの人も考えるヒントがつかめそうです。サロンに参加している看護師や医療ソーシャルワーカーなどの医療スタッフから理想的な方法が紹介されると、納得しつつも、「それがそがんはいかんとたい」と、本音のやりとりに笑いも起きます。


患者同士のピアカウンセリング 感じる乗り越える力

 多くのがんサロンでは、自身も患者である世話人が中心となって進行し、病院スタッフが会場設営や受付、お茶やお菓子の準備などを担当しています。熊本がんサロンでも、熊本大学附属病院の「がんセンター」と地域連携室に置かれた「熊本県『私のカルテ』がん診療センター」のスタッフがその役割を担っています。
 和気あいあいとした中に、知りたい情報や伝えたい気持ちがゆるやかなピンポン球のように行き来して、2時間のサロンがあっという間に過ぎました。
 熊本がんサロンがスタートして約3年半、「参加回数を重ねられた方が聞き役となって、自然とピアカウンセリングができていると感じます」と堀田さん。「患者さんそれぞれ病気も状況も違うけれど、共感し合える場。皆さんパワーがあり、それぞれの状況を乗り越える力を感じます」。そう話す堀田さんの笑顔にも、力強さが感じられます。


「がんサロンネットワーク熊本」とは〜

行政、医療、患者が連携 自分らしく生きる環境づくりを

 昨年10月、県内のがんサロンの世話人11人が理事となって「がんサロンネットワーク熊本」が組織されました。
 これまでもがんサロン間の緩やかなネットワークはあったものの、多くのがんサロンが生まれたことで、互いに交流・連携を深め、学び合う場の必要性を感じたといいます。 がんサロンの運営やがんについての情報交換などを通し、がん患者とその家族が安心して治療を受けながら、自分らしく生きるための環境づくりを目指した活動に取り組んでいます。
 月に1回の理事会には、県や市の担当者や看護師、医療ソーシャルワーカーがオブザーバーとして、医師が顧問として参加。行政に意見を伝えたり、医師や看護師に困っていることを相談したりと、良い関係が築けているといいます。
 「熊本は、患者さんの思いや熱意を医療や行政が受け止め、連携してサポートしてくれる良い形ができています。他県からの見学も多く、『熊本は熱いね』と言われます」と、堀田さん。病気になっても一人じゃない。そう思える環境整備が進められている状況に、穏やかな心強さを感じました。


現在、活動している県内のがんサロン一覧(五十音順)

※開催日時や会費の有無などは各所にお問い合わせください

荒尾がんサロン「ひまわり」
荒尾市民病院相談支援センター
0968(63)1115 (代)

有明がんサロン「樹の家」
西原クリニック先ログハウス同クリニック
0968(62)0622 (代)

出水南がんサロン
熊本市中央区出水
096(379)3791 (まつだようこ自宅)

産山がんサロン
産山村診療所和室産山村住民課保健師
0967(25)2211(代)

帯山がんサロン
高野病院
096(384)1011(代)

上天草がんサロン「アクアマリン」
上天草市立上天草総合病院
0969(62)1122(代)

がんサロン天草「たんぽぽの会」
健康保険天草中央総合病院
0969(22)0011(代)

がんサロン宇城
国立病院機構熊本南病院同院地域医療連携室
0964(32)0826(代)

がんサロン再春
国立病院熊本再春荘病院研修センター内同院地域連携室
096(242)1000 (代)

菊池がんサロン「しいの木」
菊池市七城町山崎112
090(7269)4173(田村直美)

金峰山がんサロン「できたしこぼちぼちいこう楽遊彩」
熊本市河内町岳1844の416
090(4474)5368(河喜多はるみ)

くま川がんサロン
健康保険人吉総合病院多目的室 (2階リハビリ室横) 同院相談支援センター
0966(22)2191

くまちゅうがんサロン「クローバー」
熊本中央病院
096(370)3111 (代)

熊本がんサロン
熊本大学医学部附属病院内西病棟3階カンファレンスルーム同院がん相談支援室
096(373)5676 (直通)

湖東がんサロン「もくせい」
熊本市立熊本市民病院北病棟7階多目的室同院地域連携室
096(365)1864 (内線3200)

新屋敷がんサロン「ほほえみ」
くまもと森都総合病院 (旧NTT西日本九州病院) 西棟3階多目的室同院地域医療連携室 096(364)6000 (代)

済生会がんサロン「なでしこ」
済生会熊本病院同院医療相談室
096(351)1022

長嶺がんサロン「CROSS(クロス)」
熊本赤十字病院同院がん相談支援センター
096(384)2111 (内線6190)

二の丸がんサロン
国立病院機構熊本医療センター2階研修室同センター
096(353)6501(代)

働き&子育て世代のためのがんサロン
ウェルパルくまもと熊本市保健所医療政策課
096(364)3186

御船がんサロン「いきいき茶論」
御船町保健センター 2階研修室御船がんサロン世話人会
090(7533)4944 (馬場)

八代がんサロン「秋桜cosmos」
熊本労災病院同院がん相談窓口
0965(33)4151 (内線292)


今回話を聞いたのは
がんサロンネットワーク熊本 代表理事
熊本がんサロン 世話人
湖東がんサロン 世話人
堀田めぐみさん

2005年春に急性リンパ性白血病を発症。2年間の抗がん剤治療を経て、現在は無治療。07年から熊本県難病相談・支援センターの相談員を務める。今年7月に熊本市がんサポートセンターが開設した「がん相談ホットライン」の相談員(週1回)も務めている。