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「あれんじ」 2013年1月12日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
五穀豊穣、子孫繁栄の願い込めて【シシクイ祭り】

開催日:平成25年1月17日(木)
開催場所:滑石(なめいし)諏訪神社周辺(玉名市滑石)

玉名市役所から県道113号を滑石小学校方面へ車で約20分
(問)玉名市滑石上区
  区長・大野さん
☎090(7399)8256

千年以上の歴史持つ伝統行事
写真提供:玉名市文化課

 玉名市の滑石諏訪神社や公民館などで、毎年1月17日に行われる「シシクイ祭り」。同神社の祭神・建御名方大神(たけみなかたのみこと)が農作物を食い荒らすイノシシを鎌で退治し、その肉を農民に分け与えたことを起源に、千年以上の歴史を持つといわれる伝統行事です。
 年始めに狩りをする風習は、古くは大名家を中心に行われていました。単に農作物を荒らす動物を駆除するだけでなく、その年を占う願掛けの要素を含み、一年で一番重要な行事とされていたそうです。


多産なイノシシ食べ 子孫繁栄願う

 「シシクイ祭り」は、滑石諏訪神社周辺の5つの地区の持ち回りで行われます。当日は、神社で神事が行われた後、神社前にある御池(みいけ)に座元の男性が入り、池の中央に御幣(ごへい)を立てます。なぜ池に御幣を立てるかは明らかではありませんが、日照りのときでも水がかれたことがないという池には、農家にとって大切な水神様が住まわれていると考えられていたのかもしれません。
 次に、神社に戻り今年と来年の座元が袴姿(はかま)で向かい合い、世話役を引き継ぐ節頭渡しが行われます。由来は定かではありませんが、魚の口に梅の枝を刺したものが供えられるほか、柳で作った箸(はし)で刺し身を取り分けるなど、ユニークな習わしが残っています。
 最後に、公民館などで地域の人に猪肉とゴボウの煮物が振る舞われます。この祭りには、農作物を守り、五穀豊穣を祈るとともに、多産で知られるイノシシにちなみ、子孫繁栄を願う人々の思いが込められているようです。


【教えてください】

「年始めの狩り」

 阿蘇の赤水は、昔は狩り場として有名でした。中世までは阿蘇宮最大の行事とされていた「阿蘇下野(しもの)狩り」では、馬に乗った大宮司が五色の御幣を背中に刺し、白木の矢を放ったと言い伝えられています。
 この様子を見ると、狩りを
する者が神の役目を担っており、その収穫の善しあしで、その年を占うという意を含んでいたのかもしれません。
 この大がかりな狩りは、後に建久4年(1193年)、源頼朝が棟梁としての立場を示すため、多くの武士を集め富士の裾野で行った壮大な狩猟「富士の巻狩り」の見本となったとも言われています。(談)

熊本大学60年史編纂室長
(前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏