【専門医が書く 元気!の処方箋】
組織型で治療法異なる「肺がん」
年々増加し、がんの部位別死亡率で、男性は90年代から1位(女性は2位)という肺がん。 そこで今回は、肺がんの診断や治療についてお伝えします。 |
はじめに〜肺の役割と肺がんについて〜 |
肺は、胸郭(肋骨(ろっこつ)や筋肉、おなかとの間を隔てる横隔膜で作られた鳥かごのような空間)に左右1つずつ存在します。肺は、空気中の酸素を血液中に効率よく取り込み心臓を介して全身に酸素を供給し、そこで産生された二酸化炭素を排出するという、生命維持に必須な「呼吸」を担っています。従って肺は、内臓でありながら環境にさらされており、タバコや大気汚染の影響を直接受けているためにがんが起こりやすい臓器です。 |
肺がんの症状 |
せきや血痰(けったん)、息切れ、胸痛は、肺がんに多い症状といわれていますが、肺がんだけに特有の症状ではありません。肺炎や肺結核などの他の疾患との区別が必要です。 |
肺がんの診断 |
胸部X線写真、胸部CT検査において肺がんを疑う陰影があった場合には、本当に肺がんであるか、また肺がんの中でどういった種類(組織型)に当たるかを診断するために、その病変部位から細胞や組織を採取します。 |
肺がんの組織型(種類) |
【図1】
肺がんの種類と部位 肺がんは、顕微鏡で観察されるがん細胞の特徴をもとに分類されています。その大部分を占めるのが腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4つの組織型です。 |
【図2】
肺がんの組織型 |
肺がん細胞の遺伝子検査と新しい治療薬 |
がん発症の原因に遺伝子の異常があることは広く知られています。肺がんの一部では、ある特定の遺伝子の異常によりがんが発症することが明らかになり、これに基づいて、その遺伝子異常で産生される分子(たんぱく質)の機能を抑制するがん治療薬が開発されています。従って、肺がんの診断の際に、がん細胞の遺伝子検査を同時に行うことが増えてきました。
現在は上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異、ALK遺伝子転座という2つの遺伝子の異常を検査します。これらの遺伝子異常は腺がんに多く、EGFR遺伝子変異は腺がんの約半数、ALK遺伝子転座は腺がんの4〜5%に存在します(図3)。 こういった治療に結びつく遺伝子の異常が毎年のように新しく発見されてきていますので、今後もがんの診断・治療のさらなる進歩が期待されます。 がん発症の原因に遺伝子の異常があることは広く知られています。肺がんの一部では、ある特定の遺伝子の異常によりがんが発症することが明らかになり、これに基づいて、その遺伝子異常で産生される分子(たんぱく質)の機能を抑制するがん治療薬が開発されています。従って、肺がんの診断の際に、がん細胞の遺伝子検査を同時に行うことが増えてきました。 |
肺がんの治療 |
肺がん治療は、手術、放射線治療、薬物療法(抗がん剤、分子標的治療薬)の3つが柱となります。病気の進行度によってこれらを単独で用いたり、組み合わせて行ったりします。また最近では、進行がんに対し、緩和治療といって身体的、精神的なつらさに対処する治療を並行して行うことも重要視されてきています。 |
肺がんと喫煙<禁煙外来のすすめ> |
タバコの煙は直接肺内に流入するため、肺内はタバコの煙の濃度が非常に高くなります。タバコの煙には多くの有害な物質が含まれており、それらは肺がんの原因もしくは誘因となっています。 |
おわりに |
おわりに |
今回執筆いただいたのは |
熊本大学医学部附属病院
呼吸器内科 佐伯 祥 助教 ・日本内科学会認定医 ・日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |