あれんじのページ

トップページあれんじのページ「あれんじ」 2013年2月2日号 > 「日本糖尿病学会」の熊本開催を機に 糖尿病への関心と対策を

「あれんじ」 2013年2月2日号

【専門医が書く 元気!の処方箋】
「日本糖尿病学会」の熊本開催を機に 糖尿病への関心と対策を

 患者が急増し、もはや国民病という状況になった糖尿病。その原因として、生活習慣の急速な欧米化による脂質摂取量の増加や運動不足が指摘されています。今回は、熊本県における糖尿病の現状と、食生活の改善のために開発されたブルーサークルメニューなどを紹介します。

熊本県の糖尿病の現状
【図1】
熊本県における糖代謝異常の推定患者数(20歳以上)

 糖尿病は増加の一途をたどっており、平成19年度調査では20歳以上の日本人の約10%、およそ890万人がり患していると報告されています。糖尿病やその合併症である網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳血管障害は、患者さんの生活の質を大きく損なうばかりか、医療経済の面からも大きな問題です。
 熊本県においても、平成18年度の県民健康栄養調査では糖尿病推定患者数は14.1万人(20歳以上県民の9.6%)、予備群を含めると37.9万人(同25.8%)で、全国の傾向と同様、著しい増加を認めています。さらに、注目すべきことは、血糖コントロール状態の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c、JDS値)が5.6%〜6.1%の糖尿病予備群が全国平均の11.9%よりはるかに高い16.2%も存在していることです(図1)。このことから近い将来、糖尿病患者がさらに増加することが危惧されています。
 また熊本県では、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症のリスク保有率が全国平均に比べ高いことが知られています(図2)。これらの原因として、肥満者が多いこと、身体活動量が少ないことなどが挙げられています。食塩摂取量が多いことも指摘されています。
 これらの問題点は、県民に十分に周知されていないのが現状です。県内全域において、食生活の問題点を伝え食生活の是正を図り、運動習慣を定着させることが、糖尿病やメタボリックシンドロームを減少させる有力な方法と考えられます。特に食事の適正化は非常に重要で、運動だけでは十分な効果を得ることはできません。


【図2】
健診データに関するレーダーチャート


熊本県における食環境の改善を目指して ―『ブルーサークルメニュー』の開発―
【図3】
糖尿病対策のシンボルマーク『ブルーサークル』

 社会生活が大きく変化した結果、外食する機会が増え、美食を扱ったグルメ番組やグルメ情報誌が社会に氾濫しています。「おいしいものを満足するまで食べたい」という欲求は、私たちみんなが持っています。
 一方、糖尿病や高血圧症などの患者さんでは、検査成績が悪くなったとき、「外食が増えていませんか?」「外食の機会を減らしましょうね」などと担当医師から指摘された経験があるのではないでしょうか。「外食」や「宴会」が多かった後に血糖値や血圧が上昇した経験をお持ちの方も多いと思います。確かに一般的な外食では、エネルギー量や塩分等に配慮したものは少なく、「多すぎる外食」の結果、病状が悪化される患者さんが見受けられます。
 では、「外食では摂取エネルギーや摂取塩分をコントロール」できないのでしょうか。また、「健康食は味が薄くておいしくない」というのは本当でしょうか。それでは、糖尿病や高血圧を持っていると外食してはいけないのでしょうか。
 そこで、糖尿病や高血圧症などの患者さんのみならず、体重管理が必要な方、腹囲が気になる方、健康に関心の高い方などが安心して食べることができる、おいしくて摂取エネルギー量が気にならない、しかも食べると健康増進が期待できる外食メニューの開発・普及が必要と考えました。
 熊本大学代謝内科学分野は平成24年、熊本県健康づくり推進課、熊本県栄養士会と連携して、「摂取エネルギー・塩分の気にならない外食メニュー」の開発と提供を計画し、県内の飲食店オーナーやシェフにご協力をお願いしました。『糖尿病対策』のシンボルマークである『ブルーサークル』(図3)にちなんで『ブルーサークルメニュー』(ロゴ:図4)と銘打った健康的な外食メニュー募集に対し、県内の飲食店やホテル等から多数の応募が得られました。
 ブルーサークルメニューの定義は、県内の飲食店、弁当店、総菜店などが考案したオリジナル外食メニューで、総エネルギー量が600 kcal未満、塩分が3 g以下のランチメニュー、もしくはコースメニューです。これを厳格に評価するため、県栄養士会医療事業部所属の管理栄養士に応募作品のカロリー・塩分計算を行ってもらいました。カロリーあるいは塩分がオーバーしていたものは、規定内に収まるよう、また栄養バランスを適正化するように、さらに創意工夫をお願いしました。シェフは、「味は落とせない」「満足度も落とせない」という高いレベルで仕事を行っておられます。栄養士とシェフは時にはぶつかり、時には譲歩し、お互いが持っている知識、技術、アイデアをフルに活用して、ブルーサークルメニュー(図5)を完成させてもらいました。
 現在、認定されたメニューを持つ店は、熊本県から「健康づくり応援店」に指定されています。このブルーサークルメニューを県民に広く知ってもらうために、熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業(当科運営)のホームページ(図6)や県栄養士会のホームページ(http://www.kuma-eiyoushikai.com/index.php/ja/bluecircle.html)をはじめ、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌・タウン誌などで広報しています。また、熊本市内の小学生家庭にも周知すべく、「こども新聞」にも記事を掲載しました。
 このブルーサークルメニューで、これまで血糖値が上がったり、体重が増えたりするのを心配しながら外食していた方も、心から外食を楽しめ、しかも生活の質が改善することを願っています。県内のシェフが知恵と腕をふるった、おいしいブルーサークルメニューをぜひともお試しください。


【図4】
ブルーサークルメニューのロゴ


【図5】
ブルーサークルメニューの一例
(zテル日航熊本「弁慶」のランチ『健美膳』)
海藻やコンニャク、きのこなど不足しがちなミネラル、食物繊維を含む食材を取り入れている。また、それによってカロリーが減ったため、県産牛や鯛などの食材も使うことが可能に。フルーツを中心としたデザートは、血糖上昇に影響のない甘味料を使用している。総エネルギー545kcal(お一人様2,800円(税金・サービス料込))※写真はイメージです


熊本県糖尿病医療スタッフ養成支援事業のホームページ
http://kumamoto-dmstaff.org/bcm/


5月、熊本市で第56回日本糖尿病学会年次学術集会開催
熊本出身の画家 葉祥明氏書き下ろしの学会ポスター

 平成25年5月16日(木)〜18日(土)の3日間、熊本市の熊本城を中心としたエリアにおいて「糖尿病学の進化と絆」をメーンテーマに、「第56回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:荒木栄一)」を開催します。
 近年の糖尿病学・糖尿病医療は、さまざまな学問や科学技術と結びつき、大きく進歩・発展し、まさに「糖尿病学の進化」が起こっています。有効な糖尿病対策には、糖尿病学の発展とともに保健ー医療連携、チーム医療、地域医療連携、世界との連携といった「糖尿病学の絆」が必要です。患者を含めた皆が『絆』によって結びつき、協力して、さらに「糖尿病学を進化」させることを目指します。


糖尿病啓発電車ブルーサークル・くまモン号
糖尿病啓発市電


熊本大学大学院
生命科学研究部代謝内科学分野
荒木栄一教授


熊本大学医学部附属病院 
代謝内分泌内科
本島寛之助教