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「あれんじ」 2012年11月3日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第二十五回】長い通勤

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第二十五回】

【第二十五回】長い通勤
菊池郡市医師会立病院 
腎臓内科医師
前川 愛

 私は通勤のため熊本市内から菊池まで毎日約30qの道のりを車で往復している。所要時間は片道1時間。「車の中で毎日2時間も何を考えて運転しているのだろう?」とお思いかもしれない。最初のころは間に合うかイライラしていたが、だんだんと時間配分が分かってくるようになり、行きも帰りも到着時間を予想できるようになった。
 そうなってくると余裕も出て、車の中で歌を歌いストレス解消をしたりする。車の中は自分だけの空間だから大声で歌っても誰にも迷惑かけない。
 帰り道に今日一日の反省をしたりもする。「あの患者さん、もっと話したそうだったなあ。もっと時間をかけて聞いてあげればよかった…」など今日一日足りなかったことを。忙しくて精神的に余裕がなく、ついカッとなった日でも、運転しているとだんだんクールダウンしてくる。「私の言い方も悪かったな。いつもなら何でもないことなのに」と病院スタッフに対し大人気ない態度をとったことを反省したりもする。
 自分の両親に対してもそうだ。普段感謝はしていても素直に口に出せなくて、それどころか逆に反発してしまうことさえある。親子げんかしたときは、別々に暮らしているのでそのまま何日も話さないことがよくある。そんな時、運転しながら、だんだんと両親の気持ちも分かってきて、自分も言い過ぎたと反省する。そして車を降りながら早速、実家に電話。「もしもし、私だけど。この前はゴメンね」
 私にとって長い通勤は、そう悪いことばかりではなさそうだ。
 でも、事故には気をつけて!