【四季の風】
第19回 露
秋になり空気が冷えると、水蒸気が露になる。ほんの小さい露だが、「露」は、俳句の世界ではなかなか大きな季題である。夏から秋への季節の移(うつ)ろいを一番実感できるのが、秋風と露。白露(しらつゆ)、朝露、夜露、露の玉、それに、さっと降る時雨(しぐれ)のように一面に降りた様子を「露しぐれ」とも言うし、身ほとりが何となく露が満ちた思いのすることを「露けし」と言ったりする。「露」には、こうした透明感とはかなさがあって、私はこの季題が大好きだ。 |
神体は剣(つるぎ)に在(おわ)し露しぐれ 松本たかし |
白露や死んでゆく日も帯締めて 三橋鷹女 |