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メタボリックシンドロームが肝臓に現れる!? 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
アルコールの肝臓への影響は知られていますが、アルコールをそれほど摂取しなくても糖尿病や肥満に伴ってアルコール性肝障害に似た肝障害が起こることが分ってきました。 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言われるものです。 今回は、NAFLDとそれに伴う疾患についてお伝えします。 |
はじめに |
お酒を多く飲むと肝臓を傷めます。アルコールを摂取すると、脂質の吸収が増え、脂質の合成が増加して分解が阻害されるため肝細胞の脂肪化が生じたり、アルコールそのものや代謝の過程で産生されるアセトアルデヒドなどの代謝産物のために肝臓の炎症、線維化をきたしたりします。このためアルコール性の肝障害では、特徴的な脂肪肝や肝炎を発症するのです。これをアルコール性脂肪性肝炎(alcoholic steatohepatitis:ASH)と呼んできました。 |
飲酒を原因としない肝障害 |
【図1】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の概念
ところが、アルコールを飲まないか飲んでも1日にエタノール量20g以下の場合でも糖尿病や肥満に伴ってアルコール性肝障害に似た肝障害が起こることが分ってきて、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)という概念が生まれました。 |
【NAFLDの症状・特徴】肥満、メタボとの関係の強い肝障害 |
肝障害の進行による症状ではNAFLDに特異的なものはありません。肝臓は“沈黙の臓器”と言われる通り、ある程度病期が進行しても、特に慢性に進む場合は症状として現れにくいのです。これは肝臓の機能の予備能力が高いためですが、それでもそれを超えて進行すると、手掌紅斑(しゅしょうこうはん)(手のひらが赤っぽくなる)やくも状血管腫(顔や胸に出やすいクモや星の形に見える細い新生血管)といった慢性肝障害に特徴的な変化や、さらにある程度進んだ肝硬変になると、倦怠感、黄疸(おうだん)、腹水といった症状が出現しますが、いずれも他の原因による肝疾患の場合と同様です。 |
【NAFLDと肥満】中等度以上の肥満者では約80%の頻度 |
【図2】肥満者(BMI≧25)の割合の年次推移(平成7年〜22年)
先進国ではNAFLDの患者は年々増加しており、数ある肝疾患の中で最も頻度が高く、そのうちの約20%は進行性のNASHとなり、さらにその一部は肝硬変や肝がんへ進展します。 |
【図3】肥満者(BMI≧25)の割合の年次推移(昭和58年〜平成22年)
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【NASHと肝がん】NASHからの肝がん発生多い男性 |
NASHからの肝がんの発生頻度については、C型やB型の慢性肝炎/肝硬変の場合ほどは明確にはなっていませんが、C型慢性肝疾患からの発生頻度よりは低いと考えられています。 |
【NAFLDの治療】生活習慣の改善を基本にチーム医療対応も |
【表1】NAFLDの食事療法のポイント
NAFLDの治療は、適度の運動と食事療法といった生活習慣の改善が基本です。食事療法は基本的には食事制限となりますが、急激な体重の減少や極端な食事制限を行うと末梢組織から脂肪が動員されて脂肪肝を増悪させることもあるので注意が必要です。 |
おわりに |
脂肪肝は心配ないと考えられていたのは過去のことです。健診などで肝機能障害を指摘された場合は、専門の医療機関を受診する必要があります。NAFLDと診断された場合は、進行を防止し、正常の肝臓に戻るよう生活習慣・環境の改善を図って、NASHに移行することはぜひとも避けたいものです。 |
今回執筆いただいたのは |
熊本大学大学院
生命科学研究部 消化器内科学 田中 基彦 准教授 ・日本内科学会指導医 ・日本消化器病学会指導医 ・日本肝臓学会指導医 ・日本消化器内視鏡学会専門医 |