【専門医が書く 元気!の処方箋】
甲状腺の病気
「甲状腺の病気」と聞いてすぐに具体的な病気が思い浮かぶ人は少ないかもしれません。甲状腺の病気は、患者さんの数の割にあまり知られていません。そこで今回は、甲状腺の代表的な病気についてお伝えします。 |
はじめに |
ホルモンを産生する内分泌臓器として、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓(すいぞう)、副腎、精巣、卵巣などがありますが、それぞれの内分泌臓器に特有の病気が数多く存在します。甲状腺はその中でも患者さんの数が多い内分泌臓器の一つです。 |
甲状腺の病気 |
【図1】甲状腺の場所
甲状腺は首の喉仏(のどぼとけ)の下にあり、気管の前面にくっついている臓器で、代謝を調整する甲状腺ホルモンを作っています(図1)。甲状腺ホルモンは、原料の一部としてヨウ素が用いられており、また、甲状腺の中に大量に蓄えられています。 |
甲状腺中毒症 |
【表1】甲状腺の病気による症状
血液中の甲状腺ホルモンが上昇していることによって表1(右)のような症状が出ている状態を「甲状腺中毒症」と呼びます。甲状腺中毒症の主な症状は、過剰な甲状腺ホルモンの作用によって起こる代謝の亢進(この場合は、生体による物質の利用が異常に高まりすぎている状態を指します)を反映しています。甲状腺ホルモンには食欲増進作用もあるため、甲状腺中毒症になっている場合は食欲が増加します。しかし、代謝が亢進しているため体重があまり増えないのが特徴です。 |
【表2】甲状腺中毒症の原因となる疾患
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甲状腺機能低下症 |
軽い甲状腺機能低下症であれば無症状ですが、甲状腺機能低下症が顕著になると代謝の低下に伴う表1(左)のようなさまざまな症状が出てきます。 |
甲状腺腫瘍 |
甲状腺の中に大きな腫瘍ができれば患者さん自身も皮膚の上から触れることができますが、小さい腫瘍の場合は触っても分からないことが多く、甲状腺エコーなどの画像検査でたまたま見つかることがあります。 |
最後に |
甲状腺の病気には症状がほとんどない場合も多いため、すぐには気付かれないこともあります。表1のような症状や首に何か触れるような感じがあれば、甲状腺の病気が隠れている可能性もありますので、一度近くの病院を受診し、検査を受けるようにしましょう。 |
今回執筆いただいたのは |
熊本大学大学院
生命科学研究部 代謝内科学 河島 淳司 助教 ・医学博士 ・日本内科学会認定内科医 ・日本内分泌学会専門医 ・日本糖尿病学会専門医 |