【専門医が書く 元気!の処方箋】
赤ちゃんを重症感染症から守るため生後2カ月目からの予防接種を
赤ちゃんが生まれたら、「何の予防接種をいつ受けさせたらいいの?」「重い副反応の心配はないの?」など、ママたちの大きな関心事の一つである予防接種。そこで今回は、予防接種に関する最新の情報をお伝えします。 |
生後2カ月の赤ちゃんに予防接種は必要ですか? |
おなかの中で赤ちゃんはお母さんから免疫(めんえき)グロブリン(抗体。体内に侵入してきた細菌やウイルスに結合し、体内から排除する役目を担います)を胎盤を通してもらっていますので、通常は生後9カ月ころまでは麻疹(ましん)、水痘(すいとう)、おたふくかぜなどの感染症からは守られています。これを母子免疫と呼びます。 |
細菌性髄膜炎とはどういう病気ですか? |
【図1】細菌性髄膜炎の起炎菌
最初は、周りの人(兄姉や保育園の友達など)から感染したヒブや肺炎球菌が鼻の粘膜に定着することから始まります。たいていは保菌するだけ(菌はいるが発病はしない状態)で済みますが、一部の赤ちゃんでは、血液中で菌が増殖し(菌血症)、続いて、菌が中枢神経系に侵入し、脳を覆う膜に感染することで髄膜炎が発症します。 |
ロタウイルス胃腸炎に対しても予防接種が必要ですか? |
【図2】ロタウイルス胃腸炎の疫学 (日本)
世界保健機構(WHO)の調査では、2008年には世界中でロタウイルス感染症により45万3000人もの5歳未満の子どもたちが死亡しています。その死亡症例の多くは発展途上国に集中していますが、ロタウイルスは衛生状態に関係なく先進国においても発展途上国と同じように5歳までにほとんどの子どもたちに感染します。 |
どのようなスケジュールで受ければいいですか? |
【表1】米国における0-6歳の予防接種スケジュール(2012年)
ワクチンによる感染症予防を積極的に行っている米国では、定期接種のワクチンの数が日本よりもかなり多いにも関わらず、効率よく複数のワクチンを同時に接種すること(生後2カ月目にはヒブ、肺炎球菌、三種混合、ロタウイルス、不活化ポリオ、B型肝炎の6種類のワクチンが定期接種として同時に接種されます)、加えて接種スケジュールを非常にシンプルにすること(出生時、生後2・4・6カ月目など)で高い接種率が維持されています(表1)。 |
【表2】当センターでの乳児期の予防接種の実際
|
ワクチンの安全性は?同時接種は問題ありませんか? |
欧米では、ヒブワクチンは約20年前から、肺炎球菌ワクチンは約10年前からすでに定期接種として多数の子どもたちに接種されており、安全性には問題ないことが分かっています。接種部位のはれ、発熱などの軽微な副反応はしばしば経験されますが、その頻度はこれまでに日本で行われている他のワクチンに比べて特に高いわけではありません。死亡などの重篤な副反応は、すでに日本で行われているワクチンと同じく極めてまれであると考えられています。 |
予防に優る救急医療はありません |
私どもの病院では毎年2万人を超える子どもたちが救急外来を受診されますが、その中にはワクチンで予防できたはずの感染症によって、治療のかいなく命を落としたり、重篤な後遺症を残したりする子どもたちが少なくありません。ご家族の悲しむ姿を見るたびに、ワクチンの重要さを痛感させられます。大事な赤ちゃんが生後2カ月になったら必ず、ワクチンを最初のプレゼントとして贈ってあげて下さい。 |
今回執筆いただいたのは |
熊本県予防接種センター
熊本地域医療センター 小児科 柳井 雅明医長 ・医学博士 ・日本小児科学会専門医 ・日本渡航医学会認定医療職 |