すぱいすのページ

トップページすぱいすのページ「あれんじ」 2012年4月7日号 > 春の田に響く太鼓と笹の音 300年前から続く豊作祈願祭

「あれんじ」 2012年4月7日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
春の田に響く太鼓と笹の音 300年前から続く豊作祈願祭

開催日:4月22日(日)
開催場所:天草市新和町小宮地地区一帯

松島・有明有料道路から国道324号を経て、県道26号を天草市新和町方面へ車で約20分
(問)天草市新和支所
☎0969(46)2111

害虫払い五穀豊穣願う

 米の早期栽培が行われている天草では、例年4月中旬ごろから田植えが始まります。その後に、害虫を追い払うとともに、その年の豊作を願い「虫追い祭り」が行われます。
 いつ始まったかは明らかではありませんが、祭りに使われる鐘に元禄10年(1697年)の銘が残っていることから、それ以前にはすでに行われていたと思われます。享保14年(1729年)に、洪水や風害、害虫による凶作から食料不足が起き、天草全島で大量の餓死者が出ました。それを機に、五穀豊穣を祈願する虫追い祭りがさらに盛大に行われるようになったといいます。


春の風物詩、太鼓踊りに笹踊り

 祭りではまず、この地一帯を水不足から救うために造られた大杉溜池の記念碑前で神事が行われます。神前には、米やお神酒のほか、長さが1メートルもある御幣(竹に白い紙垂をはさんだもの)が大量に供えられます。
 神事の後に行われるのが、この祭りの見どころとなる太鼓踊りと笹踊り。鐘や笛、太鼓が鳴り響く中で、地元新和中学の子どもたちの大きな身振りの太鼓踊りと、笹で虫を追い払う様を表現した早乙女の笹踊りが繰り広げられます。
 一行は、大杉溜池から大宮地港まで、神前に供え豊作を祈願した御幣を田のあちこちに立てながら進みます。最終地点となる大宮地橋の上で、神職の持った御幣を海に投げ入れます。風上から風下に向けて追ってきた害虫を海に追い払う、という意味が込められているそうです。


【教えてください】「天草に多く残る虫追い祭り」

 虫追い祭りは江戸時代から全国的に行われている祭りで、熊本では天草に多く残っています。なぜこの地域に集中しているかは明らかではありませんが、新和町小宮地の虫追い祭りのほか、6月に行われる牛深町久玉の内の原虫追い祭り、7月に行われる河浦町一町田の虫追い祭りが有名です。
 特に一町田の虫追い祭りは、十数メートルの長い竿に五色の布の吹き流しを30枚ほどつけた虫追い旗が約20本並び、その光景は圧巻です。
 もとをたどれば、虫追い祭りも念仏踊りの一つ。この世にたたる悪霊が虫となって世に現れると考えられていました。虫追い踊りには、村に災いを引き起こす悪霊を鎮めるという意味も含んでいるようです。(談)

熊本大学60年史編纂室長(前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏