すぱいすのページ

「あれんじ」 2012年4月7日号

【四季の風】
第17回 花のころ

 三月四月は、「入学試験」、「卒業」、「入学」と、大学にとっても一番ドラマティックな時期です。
 まず入試ですが、これは卒業・進級試験とともに、人生の一大事ということで、「大試験」といって春三月の季語。

大試験山の如くに控へたり 高浜虚子

 本当に、「山の如く」で、なかなかの難物。若いころの子規も虚子も、漱石だって悩まされたものです。私自身も悩まされましたが、教師になってからは出題、採点、それに監督で忙しくしています。そんなわけで、学生や受験生、それにわが子も俳句の題材になりました。

空のあることを忘れて大試験 中正
大試験白紙はばかることもなく 〃
末の子に雪となりたる大試験 〃

 ということで、大試験のころの花といえば、やはり桜より梅。きりりとした寒さの中の梅こそ、大試験にふさわしい。合格祈願は、天神様の梅と決まっています。しかし、

校塔に鳩多き日や卒業す 中村草田男

と、卒業式のころになるとかなりあたたかで、とくに温暖化の今日では、「花」(俳句では桜を指す)が満開になって、どうかすると入学式のころには散っています。さらに最近は、国際化へ向けて秋の入学まで検討されています。これだと「サクラサク」入学式は無理だし、歳時記だって変わるのではと、少し心配です。
 ともあれ、熊本大学黒髪北キャンパスは、年々歳々、桜の隠れた名所であり続けることでしょう。

一年が一と日のやうに過ぎて花 中正