肥後医育塾公開セミナー

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平成24年度 第3回公開セミナー「女性がじぶんで決めること」

【講師】
一般社団法人日本家族計画協会家族計画研究センター所長
北村 邦夫

『講演C ピルとの上手な付き合い方』
安全、確実な避妊効果 生活の質向上にも一役


   現代の女性は、昔の女性に比べて初経が早くなる一方、初産は遅い傾向にあります。生理痛があって痛み止めを必要とする女性の数は、私たちの調査では899万人に上り、卵巣がんの患者は増え、死亡率も高まっています。これは生涯の排卵回数の増加と関係があります。
 視床下部、下垂体からの刺激を受けて、女性の体の中では、卵巣から卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されています。妊娠しなければ血液中のホルモン濃度が低下し、子宮内膜がはがれ落ちるとともに生理が起こります。
 経口避妊薬(ピル)は、エストロゲンとプロゲステロンを合わせた製剤です。ホルモンの作用で、排卵を抑制すると同時に、子宮の入り口から分泌される粘液を変化させることで、精子が子宮内に進入するのを抑え、仮に受精が起きても子宮内膜への着床を困難にします。
 このような多様な作用によって、避妊効果をより確実にします。
 またピルは、月経困難症(生理痛)や生理不順、中間期出血、生理による貧血を改善でき、卵巣がんや子宮内膜がん、良性の乳房疾患、骨盤内感染症などへの効果も期待できます。
 ピルは21日間飲んで7日間休薬する、あるいはその間、偽薬を飲む「28日周期」が基本で、休薬中に生理が起こります。ただし服用には注意も必要です。妊娠、授乳中は胎児への影響を考慮し、服用してはいけません。また35歳以上の女性で1日に15本以上たばこを吸っている人は、血栓症や循環器疾患の発症率が高まるため、使うのを避けてください。
 避妊法を選択する理想的な条件には、確実な避妊が可能、使い方が簡単、長期間にわたって使える、お金がかからない、副作用がない、妊娠しても胎児に影響が及ばない、性感を損ねない、男性の協力がなくても女性が主体的に使える─などが挙げられますが、これらの条件に最も近い避妊法がピルだといえます。
 私たちは、ピルを避妊薬としてだけでなく、大切なイベントと生理がぶつからないよう上手に使う方法も提案しています。例えば、受験日と生理の日がかぶらないように、生理時期をずらす活用法もあります。
 現在、世界で約1億人を超える女性がピルを使っています。しかし、県内での使用率は極めて低いのが現状です。
 ちなみに15〜49歳の女性の年間でのピル支出額は、私たちの調査によると、全国平均が615円なのに対し、熊本は460円。東京は1074円です。また熊本は、人工妊娠中絶件数が全国ワースト2位となっています。
 女性のQOL(生活の質)を高めるためにも、ピルを使うことを積極的に考えてもらいたいものです。