肥後医育塾公開セミナー

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平成20年度 第2回公開セミナー 「呼吸器・循環器疾患の予防とリハビリ」

【講師】
江南病院診療部長兼呼吸器内科部長
内藤 博道

『慢性呼吸器疾患のリハビリの実際と意義』
継続的に治療サポート 障害からの自立めざす


  慢性呼吸器疾患では、中等症以上の患者さんからリハビリが必要です。酸素療法が必要なケースもあり、10年以上にわたり酸素療法を続けている方も少なくありません。

 私たちが行っている包括的な呼吸リハビリの目的は、呼吸器の病気で生じた障害に対して患者さんが自立できるよう、継続的にサポートしていくことです。息苦しさを和らげ、持久力を増し、生活の質を高めて、“活動力"の維持と改善を支援していきます。

 肺は筋肉ではないため、自分自身では動きません。肺の周りのいろんな筋肉が働き、受動的に膨らんだり縮んだりすることで酸素を取り入れ、炭酸ガスを外に出す仕事を行っています。横隔膜もそれらの筋肉の一つです。そのため肺の働きが低下すると、息苦しくなる→動かなくなる→筋肉が弱る→肺の動きが低下する→さらに息苦しくなる―という悪循環になり、この悪循環を断ち切るのが呼吸リハビリなのです。

 呼吸リハビリには、呼吸理学療法と運動療法の2種類があります。呼吸理学療法には、リラクセーション、呼吸筋トレーニング、胸の動きを良くする訓練、たんを出しやすくする介助や訓練などがあり、運動療法には、全身的な筋トレ、歩行訓練、階段の昇降、エアロバイクなどがあります。運動量は患者さんの状態によって異なります。リハビリの効果は、開始時と終了時の連続して歩ける距離などを利用して評価します。

 私どもの病院の地域連携には、他院などからのリハビリ依頼の紹介も含まれます。院内では、医師、看護師、理学療法士をはじめ、栄養士、薬剤師、相談員などさまざまな職種の人間が連携し、患者さんをサポートしていきます。また退院後は、患者さんを地域の病院や診療所にお返ししますが、患者さんや紹介医の要望に応じてさまざまな対応をとります。

 基本的に、呼吸リハビリは自分の好きなことを長く楽しむための手段と思って実践していただくと、それほど苦痛に感じないと思います。前向きな考え方の人や、良い意味で自己中心的な人の方が、お元気な場合が多いようです。そして最後に、禁煙は呼吸器疾患の治療とリハビリの大前提であることをくれぐれもお忘れのないようお願いします。