肥後医育塾公開セミナー

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平成19年度 第3回公開セミナー「関節リウマチを考える」

【講師】
熊本整形外科病院副院長
束野 通志

『『関節リウマチの薬物療法について』』
注目高い生物学的製剤 自分に合う薬の処方を


   関節リウマチは、症状が全身に現れる炎症性の病気です。治療は薬物療法が中心になりますが、短期間で終わるものではなく、根気強く取り組まなければなりません。薬に対する知識と医師とのコミュニケーションが何より大切です。

 症状には、いくつかのタイプがあります。「多周期憎悪型」といって良くなったり悪くなったりしながら病気が進行していくタイプ。これが最も多く、全体の7割です。再発しない「単周期型」は2割。残り1割が「急速進行型」です。関節破壊は早期に始まるため、早期発見、早期治療で悪化を防がなければなりません。

 進行の程度に応じ、3種類の薬が用いられます。1つ目は非ステロイド薬です。炎症と痛みを抑えます。次にステロイド薬。この薬については、使いたくないという方も多いようですが、炎症を抑える特効薬です。効果が確実なため、どうしてもという場合は医師の指導の下で使ってください。大量・長期使用は重い副作用が出ますので、避けなければなりません。

 3つ目が抗リウマチ薬です。関節リウマチについては、発症と免疫の関係が詳しく解明されてきて、「この病気は自己免疫疾患である」と考えられるようになりました。抗リウマチ薬は病気の本体である免疫に働き掛けて炎症の発症を抑え、病気の進行を抑制できる薬です。効果は一般的にゆっくりですが、いったん効果が表れてくると、長期間持続します。

 ただし、効き方は人によって異なります。効く人と効かない人がいるため、使ってみなければ分からないわけです。医師とよくコミュニケーションを取り、薬の効果と副作用、病状や体質などを考え合わせ、最も適切で効き目の高い、そして、自分に合った薬を処方してもらってください。

 ところで、現在抗リウマチ薬として最も注目されているのが生物学的製剤です。これは、特定の物質だけに結合する抗体や受容体を作って体内に注射し、ほかの免疫反応を抑えず、炎症を引き起こす免疫反応だけを制御しようというもの。関節リウマチでは、免疫細胞の情報を伝達する「サイトカイン」のうち、TNFα(アルファ)などの炎症性サイトカインを標的にした治療薬インフリキシマブ(レミケード)やエタネルセプト(エンブレル)が開発され、優れた治療効果を発揮しています。

 そうなると、現実にどこまで良くなっているか、その判定や評価が気になります。

 関節リウマチの治療においては、「完治」の代わりに「寛解」という言葉が使われます。病気が治るのではなく、症状が和らぐという意味です。寛解に持ち込むことができれば、変形した関節を元に戻すことはできないにせよ、それ以上の変形を防ぎ、日常生活においても不都合なく過ごせます。もちろん、これまでも寛解はありましたが、生物学的製剤の登場により、そのことが、目に見える形となりました。まさに大きなターニングポイントになったと思います。

 一方で問題点もあります。それは薬価が高いこと。今のところ、年間160万円程度かかります。保険は使えますが、それでも負担は大きい。もう少し利用しやすくなることを願うばかりです。