肥後医育塾公開セミナー

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平成19年度 第3回公開セミナー「関節リウマチを考える」

【講師】
鹿児島大学大学院歯学総合研究科 感染防御学講座免疫病態制御学分野教授
松山 隆美

『『関節リウマチとはどんな病気か』』
「免疫系」の異常が関与 関節以外にも症状出る


   「関節リウマチ」は、複数の関節が痛み、腫れ、破壊され、関節以外にも症状がある病気です。多くの方は手足が痛む病気すべてを「リウマチ」と思い、お年寄りがかかる神経痛と理解しているケースが多いようです。今回説明する関節リウマチは、手足が痛む病気の俗語として使われているリウマチとは大きく異なります。

 体や手足に痛みを伴う病気は、「リウマチ性疾患」と呼ばれ、関節リウマチはその一つです。関節リウマチは、関節以外にも症状が出るのが特徴。最も多いのが肺で、特に間質性肺炎など要注意です。これに大きく関係しているのが喫煙といわれます。

 治療は、痛み止めの投与だけでは治りません。長期間の治療が必要です。ただ、最近は優れた薬が次々と開発されており、早期発見、早期治療により、決して恐れる病気でなくなりました。将来的に、10年後には根本的な治療が普及すると思われます。20年後には手術の必要もなくなるのではないでしょうか。

 関節リウマチが発症する年齢は働き盛りの40─50代が多く、中でも女性が多い傾向があります。男女比で1対4の割合です。女性に多い理由は、女性ホルモンとの関係が指摘されます。というのも、妊娠中は良くなり、出産後数カ月で発症する例が多いからです。それは、女性ホルモンの中には自己免疫力を高める働きをするものがあるからです。発症の男女比が高齢になるほど差がなくなるのもその表れからだと思われます。

 病原体などの異物が体内に侵入したとき、異物を攻撃し対外へ排除する防御システムを「免疫」といいますが、関節リウマチの原因は、免疫システムの異常がかかわっていることが、免疫学の進歩などで次第に明らかになってきました。これを「自己免疫疾患」といい、関節リウマチの患者さんの多くが「リウマチ因子」を持っています。ただし、リウマチ因子は健康な人も持っている場合があり、これだけが原因とはいえませんが、重要な診断指標であることは間違いありません。

 関節リウマチの特徴的な症状である痛みや腫れは滑膜の炎症で起こります。骨と骨とが接する関節は軟骨で覆われ、圧力を和らげるクッションの役目をしています。骨と骨との間にはすき間があり、そこには関節液がたまっており、関節をスムーズに動かす潤滑油の役目を果たしています。これら関節を取り巻いているのが関節包です。滑膜はこの関節包の内側に当たり、厚さ約1ミリのごく薄い膜状の組織です。この滑膜が関節液を作り出しています。

 この部分が炎症を起こすと、さまざまな変化が起こってきます。滑膜が肥厚(ひこう)して腫れ上がり、関節液を作り出す機能も異常を示し、大量にたまってしまいます。いわゆる「水がたまる」状態です。さらに炎症が進むと、やがて滑膜は軟骨や骨まで侵食していきます。つまり、骨が溶けてしまうのです。

 このように関節リウマチは厄介な病気で、かつては難病の一つでした。しかし、現在は違います。医学の進歩で、不明だった点もかなり解明されてきました。そう遠くない将来、関節リウマチで悩む人はいなくなることでしょう。