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平成27年度 第2回公開セミナー「感染症新時代」

司会・講師


肥後医育振興会理事長
西 勝英
熊本大学名誉教授、桜十字病院総院長
【司会】
肥後医育振興会副理事長
山本 哲郎
元熊本大学大学院 生命科学研究部教授
【座長】
熊本大学エイズ学研究センター 教授・センター長
松下 修三
 今回は私たちが、ざまざまな感染症の脅威にさらされながら暮らしているということを、身近な話題として提供したいと考えました。これまで全く知られていなかった感染症が流行するのを「新興感染症」、かつて猛威を振るった感染症で、再び流行してきたものを「再興感染症」と呼びます。感染症については、普段はそれほど気にならなくても、流行が一度起こると切実な問題になります。海外で流行する感染症もいつ日本に入ってくるか分からない、あるいは、もう入っているかもしれないということが、目に見えない感染症の恐怖だと思います。感染症を過度に恐れ、パニックを起こさないよう、正しい知識を身につけてください。
【講師】
国立感染症研究所ウイルス第一部 部長
西條 政幸

演題:〈講演@〉ウイルス性出血熱ってどんな病気? 〜身近に存在する重症熱性血小板減少症候群を知る〜
【講師】
国立国際医療研究センター 国際感染症対策室 医長
加藤 康幸

演題:〈講演A〉エボラ出血熱 〜西アフリカにおける過去最大の流行から学ぶ〜

熊本市保健所 所長
長野 俊郎

セミナーの内容

  第56回肥後医育塾公開セミナー「新興感染症から家族をどう守る? 感染症新時代」が10月17日、熊本市中央区のホテル熊本テルサであり、約150人が聴講した。公益財団法人肥後医育振興会、一般財団法人化学及血清療法研究所、熊本日日新聞社が主催。
 開催に当たり肥後医育振興会の西勝英理事長があいさつ、同振興会の山本哲郎副理事長が司会、熊本大学エイズ学研究センターの松下修三教授・センター長が座長を務め、感染症の流行とその対応の在り方について、2人の講師が講演。後半はパネルディスカッションが行われた。

約150人が聴講した肥後医育塾=熊本市中央区のホテル熊本テルサ
講演後はパネルディスカッションが開かれた。写真左から長野氏、加藤氏、西條氏、松下氏
医療機関でのエボラ出血熱疑い受診事例の行政(県内保健所)の対応

パネルディスカッション

〈コーディネーター〉
 松下 修三氏
〈パネリスト〉
 西條 政幸氏
 加藤 康幸氏
 長野 俊郎氏

―松下 国際化は、今後ますます進展すると思われます。それに伴い、熊本でも地域の医療従事者全員で感染症の脅威に対応する必要があると思います。その際、リーダーとなるのは保健所ではないでしょうか。まずは熊本市保健所の対応をお聞かせください。
―長野 感染症については、管轄の保健所に連絡をいただくと、感染症法に基づいて診断までの対応を行います。感染症には5つの分類があり、エボラ出血熱は1類、MERSや結核は2類、腸管出血性大腸菌(O157)・コレラ・赤痢などは3類、SFTSやデング熱などは4類、インフルエンザや風疹などは5類とされています。1類感染症は、病室の汚染された空気が外に漏れない陰圧室を備えた指定医療機関として県で唯一、熊本市民病院が指定されています。2類感染症では県内10カ所の医療機関が指定され、結核は別の指定医療機関があります。1類から4類は全て、直ちに医療機関から保健所に届け出る決まりになっています。問診、体温測定でエボラ出血熱やMERSを疑う患者が、もし医療機関に来られた場合は診療行為を行わず、保健所の対応に任せてもらいます。空港や港の検疫所では、入国時にサーモグラフィー(熱感知カメラ)で全ての入国者の体温測定をしています。西アフリカ諸国に滞在歴のある人は入国後、国内での居場所、連絡先、氏名、職業、旅行の日程などの届け出とともに、エボラ出血熱の潜伏期間である21日間は1日に2回、朝夕の体温測定と健康状態を検疫所に報告するよう求めています。その間に病気が疑われる場合は、エボラ疑似症患者として指定医療機関に入院していただくことになっています。これまで県内ではSFTSが6例あり、そのうち2人が亡くなっています。デング熱の発生事例もありますが、日本での感染ではなく全て海外からの感染の持ち込みでした。
―松下 熊本市には対応マニュアルがあるわけですね。会場から質問が届いていますが、デング熱の予防法はあるのでしょうか。
―西條 感染症の国内への侵入を未然に防ぐことは困難です。東京の代々木公園にはデング熱のウイルスを媒介するヒトスジシマカがたくさん生息しています。また、そこには流行地からのデングウイルスに感染している可能性のある旅行者が訪れます。このような条件が整うと、日本に流行していないはずのデング熱が流行します。
―松下 熊本で感染症の侵入を止めた具体的な事例があれば、お聞かせください。
―長野 「韓国から帰ってきて熱がある人がいる」という報告を受けたことがあります。しかし、MERSの症例定義であるMERS患者との接触歴がなかったため、一般の医療機関で診療を受けてもらうことにしました。
―松下 西アフリカでのエボラ出血熱のように、今後も年間2万人を超える感染症の流行が起こるのでしょうか。
―加藤 エボラは点滴などの基本的な治療をしっかり行うと、かなりの患者が回復しますが、アフリカではそのような治療が十分にできませんでした。症状がマラリアに似ているので、現地で適切に診断できる体制を整えることで患者を早期に発見できると思います。アフリカの森林は広大で、実に多様な生物がいる所ですから、今後も新たな感染症が発見される可能性はあるでしょう。海外での感染症の発生をできるだけ早く察知するために、国際社会の人々が協力すれば、流行を最小限に留めることは可能だと思います。
―西條 新たに発見される感染症は、ほとんど動物由来の感染症です。生活や経済活動の結果、これまで足を踏み入れなかった場所に生息する動物が有するウイルスに感染する機会が増えています。こうした感染症が世界中で起こっています。感染を避けるのは難しいことですが、感染症をよく学んで対策を立てることは可能です。
―加藤 流行している感染症は、海外と日本ではかなり異なります。中には有効な予防接種を事前に受けられる感染症もあります。最近、東京都内では旅行者向けの健康アドバイスをしてくれる、トラベルクリニックが増えています。特にアフリカに行かれる人は、そういった医療機関に相談されるといいと思います。
―松下 どこから入ってくるか分からない感染症に対し、常に確かな情報と正しい知識を持って、パニックにならないようにしたいものです。