肥後医育塾公開セミナー

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平成28年度 第2回公開セミナー「みんなで減らそう、糖尿病!」

【講師】
国立病院機構熊本医療センター糖尿病・内分泌内科部長
西川 武志

『糖尿病の新しい薬物治療』
薬の種類増え 病態ごとの治療可能に


   糖尿病治療の目的は、糖尿病になっても元気に長生きしてもらうことにあります。そのために合併症の予防は、重要な目標となります。具体的な目標値は患者さんごとに異なり、合併症予防の血糖管理目標値は、HbA1cが7%未満、空腹時血糖値が130未満です。より重症で治療強化が困難な際の目標は、HbA1cが8%未満に設定されています。
 治療のためには血糖を下げたいのですが、血糖が下がり過ぎると、低血糖が起こります。低血糖では冷や汗が出て、震えがきて、動悸(どうき)が激しくなります。この段階で血糖を上げる作用が早い、ブドウ糖を取る必要があるのですが、放置すると意識がなくなります。血糖を下げると低血糖リスクが増えるジレンマがあるのです。そこで、重症低血糖を起こさないような薬の使い方が重要になります。
 糖尿病はインスリンの作用不足で高血糖が続く病気です。その原因は体質や環境要因によって起こる膵臓(すいぞう)の細胞障害(インスリンの分泌障害が起きる)と肥満や筋力低下(インスリンの効き目が悪くなる)にあります。これには個人差がありますが、それらが相互に作用することでインスリンの作用が不十分になるために高血糖となり、糖尿病が起こります。治療薬は、一人一人の患者さんの病態に応じて処方されています。
 糖尿病治療薬は次々と開発されていて、現在では内服薬が7種類、注射薬が6種類あります。種類が増えて、さまざまな治療ができるようになっています。素晴らしい新薬も登場しています。低血糖を起こしにくい薬も出ており、患者さんの寿命を確保する、合併症を予防するという糖尿病治療の目的に近づいています。
 しかし、どのような薬にも副作用があります。新しい薬では長期間の安全性がまだ十分に分かってないものもあります。治療薬について適切な知識を持つとともに、主治医とよく相談して、自分に最も合った治療と薬の処方を受けましょう。