肥後医育塾公開セミナー

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平成27年度 第1回公開セミナー「泌尿器科の病気を知ろう!」

【講師】
平山泌尿器科医院 副院長
里地 葉(さとじ よう)

『講演B 女性の排尿障害 〜過活動膀胱、尿失禁について〜』
「排出」「蓄尿」2つの症状 訓練や薬などでコントロール


   排尿障害は一般に、「排出」と「蓄尿」の2つに分けられます。尿の勢いが悪い、途中で途切れる、お腹に力を入れないと出ないなどは排出障害、尿が漏れる、頻尿、尿意を我慢できないなどは蓄尿障害です。女性は男性より尿道が短く、前立腺がないので尿道を圧迫するものがありません。尿の勢いが悪いという症状は男性ほど一般的ではなく、尿が漏れる、近いなどの症状が出やすくなっています。
 排尿の際、突然我慢できないほどの強い尿意を感じる「尿意切迫感」が症状の中心にあれば、過活動膀胱である可能性があります。過活動膀胱の他の症状としては、頻尿や尿漏れがあります。ただし、過活動膀胱と診断する前に、他の病気、例えば膀胱炎、尿路結石、膀胱がん、脳や脊髄の病気、婦人科系の病気などがないかどうかを確認しなければなりません。
 治療には、生活習慣の見直しや、尿意を少しずつ我慢していく膀胱訓練といった行動療法、薬物療法があります。現在、過活動膀胱のお薬は多数発売されていますので、効果をみながら変更することも可能です。
 咳やくしゃみ、運動時など、腹圧がかかったときに尿漏れが起こる場合は、腹圧性尿失禁の可能性があります。女性は出産(経膣分娩)を経験すると、骨盤の中でハンモック状に内臓を支えている骨盤底筋群や、尿が漏れないように尿道を締めている神経が弱りやすくなります。出産後すぐに尿漏れを経験する方もいらっしゃれば、何年かたって症状が出る方もいらっしゃいます。また、加齢や肥満も腹圧性尿失禁の原因となります。
 腹圧性尿失禁の診断には、パットをあてて患者さんに指定の動きをしていただき、どのくらい尿が漏れるかを測定する方法や、造影検査で膀胱と尿道の角度をみる検査などがあります。
 腹圧性尿失禁の治療では行動療法と薬物療法に加え、手術療法も選べます。尿道の下に特殊なメッシュテープを入れて尿道を支える手術です。手術による体への影響(傷口など)はそれほど大きくないので、高齢の方でも可能なことがほとんどです。
 過活動膀胱、腹圧性尿失禁の治療はQOL(生活の質)を保つために大変重要なことです。排尿に関して気になる症状があるときは我慢しないで、ぜひ泌尿器科を受診してください。