肥後医育塾公開セミナー

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平成25年度 第1回公開セミナー「呼吸器疾患」

【講師】
熊本市民病院感染症内科部長
岩越 一

『《講演2》高齢者肺炎の予防と治療』
口内を清潔に保つ


   肺炎は昨年、日本人の死因の第3位になりました。特に高齢者に増加しており、のみ込みやせき反射の低下、寝たきりの状態での唾液などの誤嚥(ごえん)、糖尿病や薬物治療による免疫力の低下、虫歯や歯周病の増加などが肺炎につながっています。
 のみ込みや、せきなどの機能低下の理由は、脳につながった神経の機能障害と考えられています。また寝込むと、歯磨きができないなどの理由で口の清浄化能力が低下し、口の菌が増加し、唾液とともに肺に入ります。神経障害が進むと、せきをする力もなくなり、睡眠中に肺炎を起こすようになります。
 高齢者の肺炎を予防するためには、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの慢性疾患の予防や治療を、しっかり行ってください。寝たきりにならないよう転倒や骨折に気を付け、運動やリハビリで筋力を維持し、虫歯や歯周病をきちんと治療し、口の中をいつも清潔に保つことが大事です。
 それから肺炎全体の約3割の原因を占める肺炎球菌に対するワクチンの接種をお勧めします。高齢者の肺炎による入院を3〜4割抑えることが可能です。5年に1回接種が必要で、適用は65歳以上の高齢者、2〜64歳の慢性呼吸器疾患や心疾患、糖尿病や肝硬変で免疫力が落ちた人になります。インフルエンザも肺炎につながりますので、肺炎球菌ワクチンとセットでの接種をお勧めします。
 肺炎の治療は、急性期には肺炎球菌と、口の中で増える嫌気性菌に効く抗菌薬を十分に使います。また多くの患者さんは、脱水症状や栄養不足の状態にありますので、点滴を十分に行い、たんを吸引することにより、肺炎の回復を促します。熱が峠を越したらできるだけ早く積極的な食事やリハビリを行います。