肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成25年度 第1回公開セミナー「呼吸器疾患」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器内科学分野教授
興梠 博次

『《講演1》いつまでも若々しい呼吸をするには』
禁煙して肺を守る


   私たちは頭を使うときも、運動するときも、酸素を必要とします。呼吸により吸い込んだ酸素は肺から血液に入り、二酸化炭素は排除されます。血液中の酸素は、心臓から全身に送り出され、エネルギー産生に寄与します。よって、酸素や呼吸は生命維持に必要不可欠なのです。
 たばこを吸うと、刺激物を多く含む高濃度の煙が肺に入りますので、肺を傷付けます。たばこによって、COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、肺気腫)、肺がん、間質性肺炎などの肺疾患が高率に起こります。たばこの煙が通る、口の中、舌、咽頭喉頭(いんとうこうとう)、食道にもがんが起こります。さらに、たばこは動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)、脳血管障害の原因ともなり、全身に酸素や栄養を運ぶ障害が起こります。たばこをやめることにより肺を守り、全身を守ることができるのです。
 今回、「たばこはやめましたが、たき火や線香の煙は大丈夫でしょうか」という質問が来ました。たき火や線香の煙は、少しだけ吸い込む程度なら大丈夫でしょう。ただ、薪を使って煮炊きをしている開発途上国では、肺の病気が多数発生しています。
 またPM2.5の質問がありました。現在は1立方メートル当たり70マイクログラムで注意喚起が行われていますが、ぜんぞくなど呼吸器疾患がある人は、症状が出ないように十分に治療しておく必要があります。たばこを吸った部屋では200〜600マイクログラムに上りますので、たばこは厳重な注意が必要です。その他、肺を傷付ける因子には、胸膜中皮腫を起こすアスベスト珪(けい)肺を起こす石の粉(珪酸)、肺炎を起こす細菌やウイルスなどがあります。
 禁煙などにより肺を守ることは、全身を守ることにつながり、ひいては家族のためになります。そして、医療費の抑制につながり、社会のためにもなります。