肥後医育塾公開セミナー

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平成23年度 第2回公開セミナー「リハビリテーションのいまとこれからを考える」

【講師】
九州大学病院リハビリテーション部診療准教授
高杉 紳一郎

『《特別講演2》リハビリで活躍するロボットの未来』
高齢者が楽しみながら機能回復へ


   日本は本格的な高齢社会を迎えました。これからは高齢者がいきいき動いて楽しめる社会を実現しなければいけません。
 高齢者が寝たきりになる原因は、第1位が脳卒中、2位が認知症、3位衰弱、4位骨折、5位関節疾患―と続きます。骨折と関節疾患を合わせると、1位の脳卒中とほぼ同じ割合になります。足腰が衰えると、自宅でも転倒することがあるので要注意です。衰えを予防するには、足腰の筋肉を鍛える必要があります。できる限り、楽しみを見つけながら体を鍛え、機能を回復したいものです。
 そこで私たちは、ボートを漕ぐ動作で効果的に足腰を鍛えるロボットを開発しました。操作中は画面にジャングル探検のアニメ画像が映し出され、臨場感を演出してくれます。また、さまざまな足のリハビリ屈伸運動を行ってくれるロボットも造りました。これにより、リハビリを行う療法士の負担を軽くできます。こうしたロボットの利点は、疲れ知らずで同じことを何度もやってくれ、他人に気兼ねせずに済む、訓練効果を数値などで確認できるといったことです。
 「ロデム」という車いすロボットも造りました。これは、前に少し動くだけでベッドから簡単に乗り移ることができます。衝突を避ける制御機能や、サドルを上下する機能も備わり、外出が楽しくなる格好いいデザインになっています。
 ゲーム機をリハビリに活用することにも取り組み始めました。メーカーに要求したのは、説明書を見なくても容易に操作でき、絶対に転ばずに足を鍛えるゲーム機でした。「ドキドキへび退治」というマシンは、座った状態で操作、4つの穴から出てくるヘビの頭を足で踏むと引っ込み、得点が入るというものです。面白さに加え、ヘビの顔が少しだけ気持ち悪いけれどかわいい、いわゆる「キモかわいい」見た目が利用者に好評でした。
 熊本県の認知症モデル事業として、このマシンを県内3カ所の高齢者施設に納めたところ、これに関心を持ったオランダの視察団がやって来ました。同国にはゲームセンターがないそうで、若者から高齢者までが楽しめるゲーム機を同国で製造するプロジェクトが始まりました。
 「継続は力なり」―、リハビリは長く続けることが重要です。常に新しいことに心が動き、楽しく取り組める高齢者になっていただければ、体の維持・回復だけでなく、認知症の予防にもつながるはずです。