肥後医育塾公開セミナー

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平成22年度 第3回公開セミナー「消化器のがんについて知ろう」

【講師】
国立病院機構熊本医療センター外科医長
宮成 信友

『《講演2》胃がんはどう治す?』
早期なら内視鏡下で切除


   胃がんは、検診の普及や診断技術の向上、治療の進歩によって死亡者数は徐々に減っていますが、がんの中では肺がんに次いで2番目の死亡者数です。新たに胃がんと診断される患者さんは最も多く、年間12万人ほどがその診断を受けています。
 胃がんは粘膜にでき、進行すると横に広がったり、胃壁に深く潜り込んだりして拡大します。胃がんは早期の場合、症状が出ないため気付きにくいですが、内視鏡検査では胃の内部を見ることができ、早期発見が可能です。
 早期がんでも、がんが胃の粘膜に限局しリンパ節への転移がなければ、内視鏡で腫瘍を見ながら焼き切る粘膜切除や、内視鏡下に特殊なナイフで粘膜の腫瘍を完全に切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が可能です。
 手術では、胃のがん病巣だけでなく、転移の可能性があるリンパ節まで切除することが手術の基本になります。進行度に応じリンパ節の切除範囲は変わりますが、胃は全部取るか、可能なら一部を残します。胃を取った後は食事の通り道を作る必要があるため、腸をつなぎ合わせますが、再建にはさまざま方法があります。
 ある程度のがんは手術で治りますが、再発される方もいます。再発予防のための薬物治療を術後補助化学療法といいます。また、手術前に化学療法で病巣を小さくした上で手術を行う術前化学療法も研究が進んでいます。
 胃がんは進行すると肝臓や肺などに転移し、胃壁の外にまで浸潤すると、おなかの中にがんの種をまくように拡大。そうなると根治的な手術ができず、手術以外の治療法を選ぶことになります。
 胃がんは早期に治療すれば治る可能性も高まっています。治療に当たっては、患者さんの意向や、周囲の状況、生活の質(QOL)などを考慮しながら進めています。