肥後医育塾公開セミナー

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平成21年度 第2回公開セミナー「慢性腎臓病(CKD)と生活の質の向上」

【講師】
国立病院機構熊本医療センター腎臓内科医長
富田 正郎

『〈講演2〉糖尿病と腎臓』
食べ過ぎ特に注意して


   糖尿病のほとんどは「2型糖尿病」と呼ばれ、食べ過ぎと運動不足が大きく影響しています。近年、食文化の欧米化が進み、患者数はますます増加。糖尿病と診断された人の3人に1人は腎臓に障害を来します。
 糖尿病になっても腎臓病が悪化しても、しばらくは自覚症状がほとんどなく、見かけは健康な方と変わりません。しかし、糖尿病が始まった時点から「透析へのカウントダウン」は始まっています。私に言わせれば「糖尿病は家の記念碑へのカウントダウン」。記念碑とは言うまでもなくお墓のことです。
 ある透析患者さんの状態についてお話しします。その方は、暴れて透析機械の管を引き抜く恐れがあるため、ベッドに手足を縛り付けられています。足は壊疽(えそ)が進み切断され、食事も自力では取れず、きちんとカロリー計算した流動食をチューブから胃に流し込んでもらっていました。大変お気の毒です。
 ただ、食べ過ぎることがなくなり、血糖の治療に関しては完ぺきでした。糖尿病の先生は「良くなった」と言われますが、これで良くなったと言えるでしょうか。健康な生活を取り戻すことは二度とできません。
 糖尿病はひどくなると腎臓を破壊し、透析の助けが必要になるだけでなく、先の患者さんのように、体全体をむしばむ可能性があります。症状が出てからでは遅く、先送りにすればするほど、治療も大掛かりになります。
 他力本願、医者任せでは決して治りません。自己管理が重要です。受け身の治療では効果は不十分、自分の意思で積極的に取り組んでください。早期に治療を始めれば、労力は10分の1か100分の1程度で済みます。
 とにかく過食は体に毒です。会場にはご年配の方が多いようですが、ご自身はもちろん、お子さんやお孫さんにも、食べ過ぎに気を付けるよう注意してあげてください。