肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成21年度 第2回公開セミナー「慢性腎臓病(CKD)と生活の質の向上」

【座長・講師】
熊本大学大学院医学薬学研究部腎臓内科学分野教授
冨田 公夫

『〈総論〉慢性腎臓病(CKD)って何?』
腎機能低下が慢性的に継続


   近年、腎臓の機能低下が慢性的に続く状態を総称して「慢性腎臓病(CKD)」と呼んでいます。放っておくと、人工透析や腎移植などの治療が必要となる恐れがあり、日常生活に制約を受けることもあります。それ以上に重要なことは、CKDになると心臓や脳の病気になりやすいことが分かってきていることです。
 腎臓は、背骨を挟んで左右に1つずつあり、1個当たり100gほどの大きさです。血液中の老廃物や有害物質などを尿として排せつする毛細血管の塊である糸球体が密集しています。ここで血液をろ過し、常に体をきれいな状態に保つことができるのです。
 糖尿病や腎炎により、腎臓に障害が起こると、尿にタンパクや血液が出てくるため、異常を早く発見できます。ところが腎硬化症では、血管が硬くなるため、尿タンパクや血液が漏れにくく、異常の判断が遅れがちになります。
 人工透析患者は日本では毎年1万人ずつ増え、現在は約30万人と推計されています。ちなみに世界にはおよそ200万人の透析患者がいます。数値に表れない予備軍も多数いると思われ、予断を許しません。
 透析患者の3大要因として、糖尿病と腎炎、腎硬化症が問題になっています。糖尿病の場合、狭心症や心筋梗塞(こうそく)など多くの合併症を誘発します。厳格な血糖のコントロールが重要です。腎炎もかつては治療が難しかったのですが、近年、早期の治療で治ることが分かってきました。また腎硬化症は、高血圧や老化により動脈硬化を引き起こし、腎臓が硬く小さくなって機能が失われます。予防には、血圧をコントロールすることがとても大切です。
 CKDはタンパク尿と、糸球体による血液ろ過量の簡単な検査で分かります。CKDは発見が遅れれば大変怖い病気ですが、重要性をよく理解し早期発見、早期治療に努めれば、回復の見込みは十分にあります。