肥後医育塾公開セミナー

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平成17年度 第1回公開セミナー「動脈硬化と心臓病?その予防と治療?」

【講師】
熊本中央病院循環器科部長
大嶋 秀一

『「狭心症とはどんな病気か?その治療」』
前胸部などに痛み 食事や運動で予防


   皆さんは歩いたり坂道や階段を上ると息切れしたことはありませんか。このほか胸やみぞおちが痛む、足の甲がむくむ、心臓の鼓動を感じる、ふっと気が遠くなるといったことはないでしょうか。これらは心臓病の重要な症状です。

 狭心症の場合は前胸部が痛み、それが肩や左腕に達することもあります。また冷や汗を伴ったり、十五分以上続くと重症です。

 狭心症は動脈硬化によって起こります。心臓をつくる筋肉に血液を送る血管(冠動脈)に狭窄(さく)が起こり、血液の流れが悪くなる病気です。また冠動脈のけいれんで起こる場合もあります。

 狭心症は体を動かしたときに起こる労作性狭心症と、夜間、就寝中に起こる異型狭心症があります。日本人は異型狭心症が多いといわれています。

 血管の狭窄の原因には高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などがあり、けいれんはそれらにより血管の内皮細胞が傷つき血管の収縮性が増すことが原因と考えられています。

 不安定狭心症という病気もあります。これは血管が詰まり、わずかしか血液が流れない状態で起きます。発作の回数や強さあるいは持続時間の増加や、発作の出現が労作時から安静時へ変化などがあれば不安定狭心症が疑われます。一刻も早く専門医の診察を受けてください。

 狭心症は症状が治まったら、心電図を取っても分かりません。診察を受ける時(1)どこがどのように痛んだか(2)初めての発作か(3)初めてではないなら以前と比べて痛みの強さや持続時間はどうか(4)いつ、どこで、どんなときに起こったか(5)息切れや動悸(どうき)がなかったか(6)冷や汗はどうか(7)歩くとふくらはぎが痛まないか―をよく覚えておいて医師に伝えてください。

 狭心症の治療には内科的カテーテル治療、外科的、薬物治療があります。内科的カテーテル治療は狭窄した部分をバルーンやステント(ステンレス製の網)で広げます。ローターブレーターという詰まった部分を削り取る治療法もあります。

 そうした治療を施しても、再び狭窄することがあります。特に糖尿病の人がなりやすいようです。

 昨年八月からステントに薬物をしみ込ませた薬物ステント治療ができるようになりました。この治療法で再狭窄がかなり抑えられるようになりました。

 外科的治療は血管のバイパス治療です。

 薬物治療では発作を止めるニトログリセリンや発作を予防する硝酸薬などが使われます。

 狭心症から身を守るためには(1)食事に気を付ける(2)体重や血圧の自己チェックと定期検診(3)禁煙(4)体を動かす習慣(5)仕事や家事に無理をしない(6)気温の急変動に注意(7)狭心症の症状がある人は悪化を防ぐ心がけと起こった時の備えを(8)応急手当の方法を心得ておく―などを心掛けてください。運動は息をしながらする歩行や水泳、ジョギングなどが適しています。軽めの運動を長く続け、余力を残してやめるくらいが適当です。狭心症は生活習慣を良くすることでかなり予防することができます。