肥後医育塾公開セミナー

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平成16年度 第2回公開セミナー「がんの予防とくすりによる治療の最前線」

【講師】
ファーマダイワ常務取締役
丸山 徹

『「抗がん薬の副作用とサプリメントの使い方―薬剤師の立場から」』
 がんの化学療法において、薬剤師はより専門性を発揮するため、さまざまな取り組みを展開しています。


   がんの化学療法において、薬剤師はより専門性を発揮するため、さまざまな取り組みを展開しています。

 がんの化学療法で、薬剤師は幅広い役割を担っています。まず医師の処方が患者に適切か確認し、抗がん剤を調剤します。患者には投与する薬の効能や副作用とその対策について説明します。投与後は副作用が起きていないかを確認します。吐き気、痛みや脱毛などの相談に応じたり、体内で薬剤が必要な量に保たれているのかを調べたりもします。患者の栄養管理や感染予防にも携わっています。このほか自ら薬を作ることもあり、痛みを取るための麻薬に対する先入観や不安を払しょくすることも役割の一つです。

 抗がん剤の副作用は、投与された人の状態、体質や薬の種類、組み合わせ、予防策の有無、サプリメントの利用の有無などによって変わり、生命にかかわる重いものから、命にはかかわらないが、日常生活に支障をきたすものなど原因も出方もさまざまです。

 例えば、手足症候群という副作用の一種があります。命にかかわるものではありませんが、足や手の皮がはがれて赤くはれたりします。ほとんどの場合、一時的な症状なので心配はいりませんが、患者は不安になりがちです。あらかじめ正しい情報を知っていれば不安になることも少なくなります。また、分子標的治療薬のように新しいタイプの薬では、予期しない副作用が起きることあるので注意が必要です。

 抗がん剤の治療では、副作用は避けることができませんが、その一方で、支持療法とよばれる副作用対策も進歩しています。最近では遺伝子診断により副作用を予測し、それぞれの患者に応じたオーダーメードの治療を行う方法や、薬剤の投与時間を考慮したり、他の薬剤を併用することで副作用を軽減する研究などが進行中です。

 医師や薬剤師から副作用について十分な説明を受け、予防策などをよく知っておくことが大切ですが、自分自身でも体調をチェックし、管理することも必要です。何か変調を感じたらすぐに相談してください。

 あるデータでは、がんの治療を受けている人のうち、四割以上の人が健康食品を利用していました。問題はその約半数が主治医に相談しないで利用していることです。

 がん予防をうたっている健康食品は(1)抗酸化物質を含む(2)免疫機能を活性化、増強する(3)予防に有効とされる成分を含む―ものに大別されます。これらが人でも効くという科学的根拠は今のところありません。抗酸化ビタミンの一つのβ―カロチンを喫煙者に投与した例では、β―カロチンを摂取した人の方が肺がんに多くかかった研究もあります。単一の成分を取りすぎると逆効果になるのかもしれません。

 一方、食事でセレンを十分に取っている人は、前立腺がんになりにくいという報告があります。ただ、サプリメントで補給しても予防できるのかは現在検討中です。セレンは取りすぎると皮膚や腎臓に障害を起こすことがあるので注意してください。

 最近は爪を検査して、不足しているミネラルを調べてくれる薬局もあります。不足分をできるだけ食事で取るように心がけ、必要に応じてサプリメントを利用したらよいでしょう。

 中には、抗がん剤との相性が悪く、治療効果をなくしたり、逆に副作用を引き起こすものもあります。また、手術の際に合併症が出やすくなるサプリメントも流通しています。サプリメントは決してすべてが安全ではありません。利用する場合は必ず現物を持参して、医師や薬剤師に相談してください。